受託開発会社として他社との差別化をどうはかるか?(2/3)

The board Media 第一弾企画では、受託開発会社であれば誰もが悩んだことがあるであろう、他社との差別化について、PRの視点から解決策を読み解くべく、広報の専門家である、13xbordersの岡本さんとセッションを行いました。

セッションの内容を3回に分けてお伝えします。今回は第2回です。

*発言者は、O:岡本さん、T:田向


第1回を読む

(T)なるほど。では、PRの意味を捉えていれば、そこは気にしなくてよさそうですね。マーケティングも広報も何かを周知する、認知させるだけではなく、マーケットや社会との関係性のなかで価値を生み出すことを目指す活動なんですね。

(O)そうです。ですからマーケティングとPRは、企業と社会との“一貫したコミュニケーション戦略を担う”という意味で、深くつながっています。

(T)マーケティングやプロモーション、PRの活動って、商品などモノがある場合は、自分もそういったCMや広告を見たりするので、すごくイメージしやすいんですが、受託開発会社ってこれからつくるものに対して、お仕事をいただくじゃないですか。だからプロモーションやマーケティングの活動方法が、なかなか想像がつかないんですよね。
受託開発会社の場合、どうやって自分たちの特長や差別化をうったえていけばいいでしょうか。

(O)それは受託系ビジネス全般で言えることですね。それぞれのお客様が求めているもの、を提供することがソリューションであり、共通のアウトプットというものが無い。だからそれをコミュニケーションの核にできないのでは、ということですよね。
しかし、コンサルティング会社や広告代理店などお客様の要望に対して、ソリューションを作り上げる度合いが大きいビジネスほど、アウトプットの形をかたり、想像していただく、信じていただく必要がある。そういった点は、ソリューションの背景にある哲学や、ストラテジー、実績や関わる人、過去のアウトプットそのもので訴えているところが多いです。

ヴェルクさんに受託開発のお願いがくる場合は、どういったきっかけが多いんですか?

(T)最近は、Pattoやboardをリリースしたので、それを見たうえで、「こういったことをしたいんですけど」と連絡をいただくことがありますね。

(O)それはPattoを使ってアプリを作りたい、ということではなく?

(T)それ以外でもですね。やっぱり自社サービスがあると、どんな企業かイメージしていただきやすいんでしょうね。
そういう意味では、自社サービスを出してからお客様とのコミュニケーションもしやすくなりました。でも、それまでは、ほとんど人づてですね。お客様の知り合いが、こういうことをやりたがっていて、と紹介いただくことが多かったです。

(O)前の仕事が人をよんできてくれるような。それはそれですばらしいことですけどね。

(T)はい。もうそれしか無いですよね。でもそれだといつまでも続かないし、こちらから訴えかけることが出来ないじゃないですか。

(O)そうですね。でも、信頼は何よりも大きな財産です。マーケティングもプロモーションも、関係性を築き、信頼を得続けるための活動といっても過言ではないですから。
田向さん、受託開発について、value positionのような、自社の強み、競合、それにより目指すゴールを書きだしたことはありますか。

(T)Patto、boardではやりましたが、ないですね。

(O)なるほど、そうですか。
差別化というのは、企業としての差別化と、サービスとしての差別化があると思うのですが、そのそれぞれについて、考えてみると自社のことがわかってくると思います。
まず、企業としての差別化は、多少サービスまわりのことが変わっても変わらない価値です。まず、企業としての企業理念、ミッション・ビジョン・行動指針、それを考えてみましょう。お客様にとって、社会にとって、自社が出せるValueが何か。それが企業の存在意義であり、これはブランディングの核となり企業活動の中核になるものです。

(T)書き出してみることが大切なんですね。

(O)そうです。自社のこと、事業のことをわかっているつもりで、書き出すことをせずに、プロモーションで認知拡大をはかろうと考える方が多いようですが、そういうやり方だと、自分たちが誰なのかをはっきりさせないまま、マーケットの宇宙にボールを投げるようなもので、どこにあたるか検討もつきません。差別化要素をみつけようとするときは、まずは鏡をみる行為を丁寧に行うことをお勧めします。わかっているふりをせず、自分たちが誰なのかを、徹底的に考え、話し合い、書き出すことが重要です。

(T)なるほど、プロモーションで悩む前に、自社のことをもっと知るというプロセスが重要なんですね。


これが出来ます、あれが出来ます、といっても、差別化という意味ではたかが知れていて、自分たち視点で見ると、これが特長だ!と思っていても、世の中からみたらそうじゃない、大してユーザーに響かない、ということがよくあるじゃないですか。

(O)田向さんみたいに、割り切って言える技術者や経営者って少ないんじゃないですか。(笑)

(T)そうなんですかね(笑)。でも「技術力」という非常に伝わりにくい曖昧なものを打ち出して差別化を図るというのは、よほど特徴的でない限り難しい気がしています。たとえば知り合いの会社でErlangをやっている会社がいて、それはその事自体が差別化だったり。あとは有名なエンジニアがいるとか。うちの場合、Railsで開発します、スマホアプリ開発しますって言っても、多くの会社が同じことをできるわけです。「経験豊富な」とか「●●資格取得者○名」というのもよく見かけますが、誰もが書けるし、それでは、選ぶ側の人も選べないんじゃないかと思って。何を特長として言語化していけばいいか、っていうのは考えちゃいます。

(O)たしかに、技術力や、開発の仕方や協業パートナーで特長を出したり、価格設定やプランでの差別化という道筋は考えられると思いますが、よほど抜本的でない限り、長く言える特長はでてこないと思います。それをうまく活かせないと、大半のお客様にとっては、正直、手段で選んでいることにしかならないんですよね。
顧客が望むとおりに納品することが、クリアーしなければいけないポイントだとしても、企画から一緒に考える会社もあるでしょうし、仕様をだされてそれを過不足無くつくることが得意なところもあるでしょう、また市場動向をふまえた提案が出来たり、今後の技術動向をふまえた開発が得意なところもあると思います。
そういった点では、お客様とソリューションを作る際にどういった視点をもち、どのような姿勢で望むか、という点は、お客様に出せるValueにつながるので、文字にしてもいい点ですね。市場の成熟が著しい今、サービスがもたらすValueを明確に提示し、コミュニケーションに酔って理解してもらう必要があります。
そのときに、参考になるのが、このValue Propositionの指標です。
 
■顧客に提供する価値(バリュー・プロポジション)の作成
For 対象のお客様
Who ニーズの内容
our  製品・サービス名
Is   製品・サービスのカテゴリー
that  ベネフィットの説明
Unlike 競合製品・サービス
our product 差別化要素
because of our 差別化の根拠や背景技術など


(T)これ、大変ですよね(笑)

(O)そうなんですよ。このValue Propositionを埋める行為というのは、非常に苦しい。さらっと書けた、という方は社内でたくさんもんでみてほしいです。どれくらい、真剣に鏡をみて、真実に言葉にできたか、で今後使える価値がまったく変わってきます。

(T)そうですね。「board」をリリースするときに、これはやりましたね。

(O)大切なことですね。コミュニケーションの核を社内で共有することは何よりも重要です。
それに、そもそも会社って、それぞれが違うはずなんですよね。会社を立ち上げるとき、社名を考えたとき、こういった会社にしよう、こういう仕事をしていきたい、世の中をこういう風に変えたいなどのビジョンやイメージがあったはずなんです。

Velcさんはどうですか?社名の由来はなんですか?

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株式会社13xborders  代表取締役 岡本沙耶佳
広告代理店勤務、その後ベンチャー企業で広報/IR部署の立ち上げ・運営、IPOを経験後、独立。広報部門立ち上げ支援・広報人材育成・広報誌の企画/制作/編集・プレスリリースライティング・キャンペーン企画立案/運営、コンセプトプランニングなど、PRおよびコミュニケーション業務全般を請け負う。
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