中小企業経営者が押さえておくべき資金調達の方法と考え方(前編)〜4つの方法とポイント

ベンチャー企業経営者にとって、資金調達の方法、タイミングは非常に重要な課題です。スタートアップ界隈では、VCからの調達がメディアを騒がせていますが、そもそもスタートアップやベンチャー企業の資金調達の選択肢には何があるのか。

それぞれのメリット・デメリットを、検討するとともに、選択肢にまつわる噂などについて、Seven Rich会計事務所・(株)Seven Rich Accounting代表取締役社長・所長 服部さん(公認会計士・税理士・行政書士)とセッションを行いました。



*発言者は、H:服部さん、T:田向

資金調達の選択肢とメリット・デメリット

(T)ベンチャー企業の選択肢としてある資金調達方法を教えてください。

(H)まず、基本的には4種の方法があります。
  1. 自己資金:独立前の貯蓄や事業の利益
  2. 負債(デット):日本政策金融公庫または銀行・信用金庫からの融資
  3. 資本(エクイティ):VC(ベンチャーキャピタル)やエンジェルと呼ばれる個人投資家からの投資、
  4. その他:補助金・助成金、クラウドファンディング

(T)それぞれのメリット・デメリット、また、どういうケースにどの調達方法が合っているかなど、簡単に教えていただけますか。

(H)はい。
1. 自己資金での調達メリットは、経営権を自分で持てること、対外的な信用になることです。
デメリットは、金額のレバレッジが一切きかないこと、金額を大きくしようとすると時間がかかってしまうことです。

2. 負債(デット)での調達メリットは、経営権を自分で持てること、利子も1~3%程度であまり大きくないことです。
デメリットは、調達金額に上限があることと、特に創業期は信用がないので借りづらいということです。用意されている借入上限額まで借りられる会社はなかなかありません。また売上がなくても返済義務がある、書類手続きの手間がかかる、という点です。

3. 資本(エクイティ)での調達のメリットは、第一にVCやエンジェル投資家など、事業に関わるパートナーが増えることです。関わり方は様々ですが、彼らが経営者やチーム、会社にとって最良のパートナーとなれば、すべての調達方法のなかで事業に一番効果的な調達と言えます。最近は時間がかかるケースもあるようですが、基本的に投資対象となりえる根拠があれば調達期間は短いです。また返済の義務がないこともメリットですね。
デメリットは、株をとられてしまうことと、ゴールに向けてのプレッシャーが非常に大きい事。また、VCやエンジェル投資家から出資してもらうのは、そんなに簡単ではないことです。
VC調達の話題が多数メディアをにぎわせていますので、簡単なように見えますが、彼らはゴールに向かって本気で出資しパートナーとなります。話に行くときは覚悟を決めてしっかり向き合ってください。

4. 補助金と助成金での調達メリットは、経営権が持てること、返済義務もほぼない(補助金は一部返金しなければならない可能性もある)ことです。
デメリットは、書類手続きが煩雑、入金までの時間がかかることです。該当事業関連の支払い完了後に、補助金や助成金は入金されるので、その点は注意したほうがいいですね。
またクラウドファンディングは、マーケティングとしてクラウドファンディングとうまくつきあえる企業にはメリットが大きいと思います。メリットは、顧客の姿がみえる、顧客ニーズを調べられる、などマーケティングができることで、デメリットは、手数料があるので費用対効果が悪い、達成金額まで集まらないリスクがある、また金額も比較的少ない、ということです。

(T)なるほど。ありがとうございます。


ベンチャーにおける銀行からの借入

(T)銀行からの借り入れについて、ベンチャーはあまり銀行から相手にしてもらえないイメージがあるのですが、実際どうなんでしょうか。

(H) これは個人的な感覚ですが、ベンチャーが借りやすいかどうかというと、やはり借りづらいです。
理由として、ベンチャー企業が扱う特にIT関連のビジネスモデルは、従来の飲食店、美容室、建設業などの事業に比べ、銀行にとって理解が難しい、また取り扱いの実績が少ないことが挙げられます。また、ベンチャー企業は、VC調達など融資以外の調達可能性があったり、倒産しやすいこともあり、銀行にとっては、継続的な借り入れが見込みにくいお客様といえるからです。

(T)なるほど。そういった背景があったのですね。

(H)はい。ではどうしたらいいか、というと、いい担当者を選ぶことが重要です。実は融資を受けられるかどうかは担当者次第であることが多いです。IT業界や、ベンチャーの事を分かっている銀行の担当者を人から紹介してもらう、または自分で探すことをお勧めします。

(T)中小企業の場合は、メガバンクよりも信用金庫の方が融資してもらいやすい、ということも聞くのですが、これも実際どうなのでしょうか。

(H)私も独立する前はそう思っていましたが、自分の経験からこれも担当者によると言えます。
ちなみに、銀行より信用金庫の方がベンチャー企業の力になってくれるか、というと、そうでもないです。まず信用金庫は、規模よりも地域に重点をおく機関です。それぞれの担当エリアが決まっていて、その担当エリア内の企業の力になるという思考なので、ベンチャー企業やIT業を事業とする企業を取り扱う件数も多くはありません。IT企業はエリアをまたぎますし、移動もしますからね。

(T) なるほど。信用金庫さんにとって融資する理由があまりないのですね。

(H)はい。ただし、繰り返しになりますが、これも担当者によります。信用金庫、メガバンク、地方銀行など、それぞれカラーは違いますが、一概にどこがよくて、とこがだめ、ということはないので、実際に自分が良いと思う人を選ぶのが一番です。銀行はこうだ、信金はこうだという思い込みで足を遠ざけるのではなく、傾向を把握しながら、自分と相手、双方のメリットを考えるといいと思います。
 

銀行借入の審査基準とタイミング

(T)担当者次第というのは、これまで想像していたことと違いました。銀行から融資を受けられるかどうかの審査は、結局は返せるかどうか、によるのでしょうか。
当社は、創業当初、日本政策金融公庫から創業支援融資をうけましたが、それは今後の事業計画からの判断だったと思います。設立から数年経って融資を申請する場合は、これまでの業績が判断基準になるのでしょうか。

(H) そうです。ただ、業績が悪いと借りられないかというと、そうではありません。
今は、負債ではなく資本と見なすことができる借入金=資本性ローンという制度があります。資本性ローンは、たとえば7年間返済義務がなかったり、借入金を資本と見なせることで金融機関からの新規融資が受けやすくなる制度で、財務体質強化を目的につくられた制度です。
資本不足に直面していても、KPIがよければ借りられることもあるので、選択肢の1つに入れてもいいと思います。おそらくVCからの資金が入っているところなどは借りやすいと思います。

(T)なぜですか?

(H)資本性ローンは新しい制度なので、VCという第3者が出資していることは、銀行にとって1つの評価基準になるからです。

(T)なるほど。よく「銀行は業績が良い時しか貸してくれないので、いい時に融資の実績を作っておいたほうが良い」と聞きますが、それはどうでしょう?

(H)それは合っていますね。
単純に、銀行の立場で考えるときちんと返済されている方が貸しやすい。だから借りやすい、ということです。
そういった意味で私たちも実績をつくることをお勧めしますが、相談に来られる方には、まずどんな経営者になりたいのかをヒアリングしたうえで、銀行から早めに借りた方がいいのか、後で借りた方がいいのか、アドバイスを変えています。

職人肌で個人的に事業を展開したい人は銀行付き合いをそこまで考える必要はないとアドバイスしています。経営者として事業を拡大し、資金繰りをしっかりやっていきたいと考えている方には、本当に資金が必要な際にスムーズな借り入れを実現するために、その手続きのイメージを早い段階で持つように、借り入れを経験しておくことをお勧めしています。銀行の担当者に会い、どのような質問をされ、どんな書類が必要か、またスケジュール感や調達可能金額の目安などを知っておくことは、心の余裕にもつながりますし、経験としても実績としてもプラスになります。

今のベンチャーやスタートアップは、調達と言えばVCのみを検討して、銀行との付き合いを除外しがちですが、大企業を見てもわかるように、会社の成長とともに銀行との付き合いはどうしても発生しますので経験しておかないのはもったいないです。


VCからの資金調達

(T) VCからの資金調達の場合、受託の会社ではなく、何か特定のサービスがある会社に出資される、というイメージがあるのですが…

(H)個人的な意見ですが、特定のサービスに出す、か、人に出すかの二つだと思います。
この人たちなら面白いサービスを作れるかもしれない、と判断すれば、サービスが未熟でも人に対して出資することもありますからね。
資金調達に関しては、VCのゴールはIPOかBUY OUTですので、そのどちらがゴールなのか、その先をどのように考えているのか、いくらで売りたいと思っていのか、どんな世界を一緒に作っていきたいかというところをVCと話ができればいいと思います。
基本的にVCは熱い方が多く、やりきる力を持っているので頼もしいパートナーになると思います。

(T)先日話題になったGunosyの場合、創業者である福島氏の持ち株比率が非常に低かったイメージがあるのですが、VCからの調達が複数回になると創業者の持ち株比率は減っていくのでしょうか。

(H)いえ、創業者が50%以上の持ち株比率を保っているケースも当然あります。VCのゴールと自分のゴールは何かを考え、自分が株を持ち続けることがゴールであれば、持ち続けることも可能ですし、サービスを大きくするために株を手放していくのをよしとすれば、そういったやり方もあります。
サービスを提供するにあたり、自分で自由に経営したいのか、そうではないのか、どんな選択をするかによって、VCから調達するか否かが決まりますし、持ち株比率や関わってもらうプレーヤーも変わってきます。
株を持っていることが必ずしもベストではないですし、事業経営としてどのスタイルが良いかを考え抜くことが重要です。

(T)なるほど。実は、冒頭にお伺いしたVCはパートナーだ、という概念について、最近知り合いの会社を見ていて理解したのですが、VCが入った企業をみていると、VCを通じてビジネス連携が様々行われていますよね。そういったことは銀行や信用金庫さんもやってくれるのでしょうか。

(H)銀行も信用金庫もビジネスマッチングはやっているのですが、やはり従来型ビジネス(飲食店、美容室、建設業など)に強みを持っています。ベンチャー企業は彼らにとっては、特殊なケースなので、効果的なビジネスマッチングは少し難しいかもしれません。

(T)なるほど。そうすると、また資金調達の選択肢で、VCか銀行かを検討するときは、まずどんな経営をしたいか、を明確にすることが重要ということになりますね。

(H)そうですね。
アドバイスをするときには、A or BよりA and Bがいいという話をします。どちらも選択肢として持って、どちらも経験できている方が経営者としてはいいと思います。
何かあったときに調達ができるという強みができるので、まず、融資は経験した方がいいです。厳密に言うと、A and B and Cが一番よくて、VCからの調達も銀行からの借り入れも、そして自分で自己資金を稼ぐことも重要です。
お金に余裕を持つことが経営者の余裕につながり、いいサービスを提供することにつながるのであれば、お金は持っていた方がいい。
それが、負債だと落ち着かないのであれば、自己資金で行うべきですし、負債でもかまわないと思えるのであれば、借り入れの経験に投資したと考えて、負債でも持っていた方がいいんです。自分が融資で調達できる、ということを知っている余裕がVCとの交渉にもプラスになると思います。
注力したい事業に注力できるよう、自分に向いているのは何か、経営者としての自分の器と向き合う作業をしてみてください。


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Seven Rich会計事務所・(株)Seven Rich Accounting
代表取締役社長・所長 服部 峻介(公認会計士・税理士・行政書士)

北海道大学経済学部卒。有限責任監査法人トーマツ入社後、上場企業の監査・内部統制、IPO支援、株価算定、M&A、不正調査などの経験を経て、平成23年にSeven Rich会計事務所を開業。以来、会社設立から会計税務、総務、ファイナンス、IPOコンサルなど幅広い支援を累計160社以上に実施しており、会計事務所としてトップクラスのスタートアップ企業の支援数を誇る。

board事例インタビュー

プロジェクトを持つ全員が利用。営業の打ち合わせでも欠かせないツールになりました。
24-7 代表取締役 CEO 田村慶氏

これまでは、見積書はエクセル、請求書は弥生販売、見積や予算の管理はGoogleスプレッドシートを使っており、見積書、請求書、見積管理、予算管理を統一したいと思ってずっと探していました。色々と他のツールも検証しながら平行して使っていましたが、今は『board』一本です。なくせないツールになっていますね。

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