課題
- 創業初期の経営者は非常に忙しいので、本来やるべきことに時間を使うための工夫が必要
- 前回の創業時に試行錯誤した経験から、今回の創業ではSaaSを活用することで最初から効率的なバックオフィスを作ろうと考えていた
- 以前からboardとHubSpotを活用していたが、情報が分断されてしまい、二重作業が発生していた
対策
- boardをはじめ、クラウド会計や電子契約などのツールを組み合わせることでバックオフィス業務を「半自動化」する
- boardとHubSpotのAPI連携機能を活用する
効果
- インボイス制度や外貨への対応、複数のメール送付方式など、多様なニーズに継続的に対応してくれるので、安心して業務に集中できる
- APIでBIツールと連携し、本社と子会社の経営指標を一括管理
- boardとHubSpotの連携機能により、リード獲得から請求まで一気通貫の業務プロセスを実現
株式会社100(ハンドレッド)は、世界120ヶ国以上で15万社を超える企業が利用するCRMプラットフォームツール「HubSpot」を活用し、導入企業のビジネス成長を支援する事業を行っています。
100はHubSpotの日本国内パートナーとして、2021年、2022年に「HubSpot Best Partner in Japan」を2年連続で受賞。2023年8月には国内最高位、かつアジア地域全体において初となる「HubSpot Elite Partner」に認定されるなど、名実ともにHubSpotの専門家集団として活動しています。
今回、取材にご協力いただいた代表取締役の田村慶さんは、100の創業以前から長年にわたってboardをお使いいただいています。
※2014年に当時経営されていた会社での事例取材にご対応いただきました。
また、田村さんには2023年8月にリリースしたboardとHubSpotとのAPI連携機能の開発にも、アドバイザーとしてご協力をいただきました。
この連携機能により、「HubSpotではリードから営業初期段階の管理を行い、ある程度の段階になったタイミングでboardに連携し、請求までの後続業務をスムーズに進める」といった運用が可能になります。
今回、田村さんには100の創業に際してあらためてboardを採用していただいた背景について、またHubSpotの専門家の視点から、「そもそもHubSpotとは何か」「boardとの連携でどんなメリットがあるのか」といった点についてお話を伺いました。
新しい会社を立ち上げた際にも「board一択」
以前からboardをお使いいただいていますが、今回の100の創業に際してあらためて「boardを導入しよう」と思われた理由は何でしょうか?
もともとSaaS製品が好きで、board以外にもいろいろと触ってみたのですが、柔軟な帳票作成ができ、細かい部分にも気が利いていて、なおかつ案件のステータス管理まで行えるツールはboardの他にはなかったので、100を立ち上げた際も「board一択」でした。
創業当初の数ヶ月間はまだ取引数が少なかったので、ひとまずクラウド会計ソフトに付いていた帳票作成機能を使っていたのですが、取引が増えて、案件ごとの進捗を管理する必要が出てきたときに、見積もり→請求→入金までの流れをスムーズに管理するためには「やはりboardしかない」と感じて切り替えました。
以前の導入時よりも新しいツールがいろいろあったと思いますが、それらと比較した上でboardを選んだ決め手は何でしょうか?
大きく分けて2つあります。
まずは、自社の業務に合わせて柔軟な対応ができることです。
たとえば請求書について、当社は海外取引もあるためドル建てで請求書を出さなければならないケースがあります。
boardなら顧客ごとに通貨を分けられるだけでなく、「普段は円建てだが、この案件のみドル建て」という設定もできます。
また、請求書をメールで送信する際に「ダウンロードURL方式」と「メールに添付する方式」を選べるようになっています。お客様によっては、セキュリティー上メール内にあるURLを開けないようになっていることもあり、個別に選択できるとどちらにも対応できるので助かります。
他にも「1つの案件を分割して請求する」という場合に、単に金額を割り算するだけでなく、「この請求だけ明細を追加する」といった調整が柔軟にできるので、こういう点も非常に助かっています。
boardを選んだもう1つの理由は、他のツールとデータ連携をしやすいことです。
まず、請求したものが自動的にクラウド会計ソフトに連携できるようになっていること。
また、当社は子会社があるので、経営者として全体の案件や数字を管理する必要があります。これを実現するために、boardのAPIを使ってそれぞれのboardアカウントからBIツールへデータを取り込み、グループ全体としての進捗状況や経営指標を管理しています。
boardのAPIは開発基盤がしっかりしているので、レスポンスが速く、自由度も高いです。これをどの料金プランでも標準で使えるのはありがたいです。
また、開発のアドバイスをさせていただいた「HubSpotとのAPI連携機能」は、私個人としてもずっと前から欲しかったものなので、今回のリリースをとても嬉しく思っています。
業務上の「やりたい」と思ったことにこれだけ細かい部分まで対応できるツールは、boardの他にはなかなかないですね。
boardを活用した「半自動化」で創業初期の経営者の手間を削減
実際の業務ではboardをどのように利用されていますか?
2つの軸でboardを活用しています。
1つめは「受注管理」です。見積書を出した後、その案件が受注になるかならないかという確度をステータス管理しています。
2つめは「請求管理」です。当社はプロジェクト型の仕事が多く、受注した後に請求が立つまでの期間が長いため、その案件が実際に請求できる時期を管理しています。
「いつ売上が立つのか」「いつ代金が回収できるのか」という2つの軸を明確に管理できるのは、経営者としてboardを使う大きなメリットだと思います。
当社では、boardを毎日アクティブに使うのは営業や経理を中心とした10数名ですが、プロジェクトの各担当者も「追加発注の見積作成・送付」などは自分で行っているので、50名弱の社員全員がboardを使う機会があります。
二度の起業を経験していらっしゃいますが、「創業初期のバックオフィス業務」で注意すべきポイントは何だとお考えですか?
ツールをうまく活用し、経営者の手間をできるだけ減らすことだと思います。
営業やマーケティングなどのフロント業務は、経営者の仕事として当然皆さんがんばっていらっしゃると思います。
しかし、その後にある「請求書の発行・送付」や「入金確認」などのバックオフィス業務は、効率化されないまま手作業でやっている方も多いのではないでしょうか。
請求書1通を送るにも、書類を作ってメールを送るだけでそれなりに時間を取られますし、郵送が必要となればさらに手間がかかります。
私が最初に起業した当時はまだ「クラウド」や「SaaS」が普及していない時代で、選択肢が少なくていろいろと試行錯誤しました。しかし、今は手軽に利用できる便利なツールがたくさんあります。
実際に、boardを使えば請求書の作成画面からボタンをポチポチ押していくだけで取引先へ送ることができ、送付方法もメール添付・URLダウンロード・郵送をボタン1つで選べます。請求が完了するとクラウド会計ソフトに連携され、帳簿付けまでできます。
創業したばかりの経営者は、とにかく忙しいものです。
boardをはじめ、クラウド会計や電子契約などのツールを使えば、バックオフィス業務の多くの部分を「半自動化」できます。これらをうまく活用して手間を省き、経営者がやるべき仕事の時間を作ることが大切だと思います。
あらためて、boardの満足度はいかがですか?
boardは「常に90点を出し続けてくれるプロダクト」だと思っています。
SaaSは新しいツールがどんどん登場するので、最初は90点でもすぐに80点、70点と下がっていって、その頃には別の90点のツールが出てくるものです。
しかしboardは、最近で言えば「インボイス対応」や今回の「HubSpotとのAPI連携」など、ユーザーの動向を細やかにキャッチアップしてプロダクトをアップデートし続けてくれています。
もちろん、企業によって合う・合わないはあると思いますが、合う企業にとっては常に安定して90点であり続けてくれる。それが、私がboardを長く使い続けている理由です。
当社のような「受託型」「プロジェクト型」で事業を行っている企業には、とくにお勧めしたいですね。
HubSpotは「簡単で、安くて、しかも全部入り」の誰にとっても使いやすいCRMツール
HubSpotについて教えてください。そもそもどのようなツールですか?
ひと言で表すと、顧客のデータベースです。一般的には「CRM」と呼ばれるもので、HubSpotの場合は「人」を基準にしてすべてのデータが紐付いています。
HubSpotには、営業活動を管理するだけでなく、Webサイトを作る、メールを一斉配信する、サポートのチケットを管理するなど、さまざまな機能があります。
たとえば、「株式会社○○のAさん」という人がいたとすると、HubSpotを使うことで
- Aさんとはいつ、どこで接点ができたのか
- Aさんと過去の商談・電話・メールでどのような話をしたか
- AさんがWebサイトのどのページを見て、どの資料をダウンロードしたか
- Aさんから契約後、どのようなサポート依頼がありどう対応したか
といった「Aさんに関するデータ」が蓄積されていきます。
そのデータを活用することで、Aさんの関心に応じたメールを送る、過去の商談に基づいて提案を行う、前回のサポート内容を踏まえた解決策を提示する、といった「一貫したコミュニケーション」を取ることができます。
Aさんという「人」が、お客様になる前の見込み客の段階から、営業商談中の段階、そして契約し顧客になった後の段階までの一連の過程において、「その人に応じた適切なコミュニケーションを取る」ためのプラットフォームがHubSpotです。
他のCRMツールと比べた場合の、HubSpotのメリットは何ですか?
大きく分けて3つあります。
1つめは、オールインワンであることです。
近年のビジネスでは、Webがお客様との最初の接点になることが多いです。HubSpotならCMS機能を使ってWebサイトやブログを作ることができ、そこから入ってきたデータがCRMに溜まり、データを使ってマーケティングのメールを送り、商談化した後のリード管理をして……というように、デジタルを活用したマーケティングや営業活動に必要な機能がすべて揃っています。
また、オールインワンですべてをHubSpotで行えるだけでなく、「別のSFAへデータを連携し、営業活動はそちらで管理する」といった拡張性も持っています。
2つめは、簡単に使えることです。
たとえば、営業管理の機能では画面上に「カンバン方式」で案件のカードが並んでおり、案件の状態が一目でわかりますし、マウスで動かしてステータスを変更できるようにもなっています。
サイト制作やメール配信などの機能も、基本的にはマウスのドラッグ&ドロップだけで使えます。
それに加えて、複雑なデータを持たせたり、フローを組んで自動化したりするようなカスタマイズも可能なので、自社の業務に応じて利用の幅を柔軟に広げることができます。
そして3つめは、コストパフォーマンスです。
無料のツールもありますし、個人〜小規模チーム向けの「Starter」プランなら月額数千円でここまでに述べてきたことをほぼ実現できます。
このように、Hubspotは「簡単で、安くて、しかも全部入り」なので、中小企業から大企業まで、誰にとっても使いやすいCRMツールではないかと思います。
HubSpotに限らず、CRMやSFAなどのツールは「せっかく導入したが使いこなせない」という声もよく聞きます。使いこなすためのコツはありますか?
まず、最初から使いこなそうと意気込み過ぎず、「普段づかい」することが大切です。
HubSpotは、GmailやGoogleカレンダー、Microsoft TeamsやSlackなど、皆さんが日常的に使っているであろうツールと連携できる機能がたくさん揃っています。
メールを送り、スケジュールを管理し、商談の記録を取る。こうした日常業務でHusSpotを「普段づかい」することで、自然とデータが溜まっていきます。
データが溜まってさえいれば、後になって「データを活用したい」と思ったときに、いくらでも活用できます。最初から整っていなくても、必要になったタイミングで整えていけばいいのです。
当社では、2023年7月に全512ページの解説書『HubSpot大百科』を刊行しました。まずはこちらを見ながら、無料ツールやStartarプランを触って、あれこれ試していただくのが良いのではないかと思います。
そして、初めて使うときには「自分たちの仕事にツールを合わせる」のではなく、「ツールのやり方に自分たちの仕事を合わせる」ということを意識しておくと良いと思います。
HubSpotに限らず、多くのSaaSは「このような使い方をするのがベスト」という“型”に基づいてサービスが提供されています。その型に従うことで、自分たちでゼロから試行錯誤するよりも、手早く効率化を実現することができます。
まずは、ツールの“型”に沿って業務を一度回してみる。その上で、うまく回らなかった部分をチューニングしていくというように、ツールを「業務効率化のためのフレームワーク」として使ってみると良いかもしれません。
boardとHubSpotの連携機能により「データを活用した継続的なコミュニケーション」を実現できる
boardとHubSpotを連携することで、どのようなメリットがありますか?
「boardとHubSpotで情報が分断されずに済む」ことがメリットです。
マーケティングや営業活動でお客様との接点ができると、まずはHubSpotに「人」や「会社」の情報を登録します。その後、従来は見積書を作る段階でHubSpotからboardへ会社と担当者の情報を転記する必要がありました。
また、見積書のデータはboardにあるのに、見積書の提出前後のやり取りはHubSpot側に記録されているといったように、情報が分断されていました。
連携機能を使うことで、見積書作成の際にHubSpotにある「人」や「会社」の情報がboardに自動連携され、二重登録の手間がなくなります。
そして、HubSpotの「取引」とboardの「案件・見積情報」を紐付けることができるので、「この取引はどういう経緯で見積もりに至って、どんな内容の見積書を提出して、提出後にどういうやり取りをしたか」という一連の情報を、HubSpotを起点に確認できるようになります。
また、今回の連携機能には「見積書を提出した後のアクションを起こしやすくなる」というメリットもあります。
見積もりを提出した後のステータス管理はboard単体でも行えますが、HubSpotと連携することにより、
- 見積提出から一定期間が経った相手をリスト化して、最新情報やセミナーの案内を送る
- 見積もりを受け取った後にWebサイトを訪れたり資料をダウンロードしたりした人を「シグナル」としてキャッチして、フォローアップの行動につなげる
というように、見積もりを提出した後の「次のアクション」を起こしやすくなります。
boardとHubSpotの連携機能を活用することで、データを溜めておくだけでなく、そのデータを活用したお客様との継続的なコミュニケーションを実現できます。
「業務全体の効率化」を実現するプロフェッショナルを目指して
100様の今後の展望を教えてください
BtoCでは「オンラインのみで完結する商取引」が当たり前になりましたが、今後はBtoBでもその形が増えていくと予測しています。
そうなると、営業やマーケティングなどフロント部分の効率化だけでなく、受注した後のバックオフィスの部分まで含めて、業務全体の効率化が必要になります。
大企業であれば、トップダウンでERPを1つ入れれば解決するのかもしれません。しかし中小企業や、大企業の1事業部の単位で見た場合には、「現場の人たちにとって使いやすいか」という観点がとても重要です。
HubSpotはもともとマーケティングのツールとしてスタートしましたが、現在はCRMを中核としてさまざまな機能を拡張し、中小企業から大企業まで使いやすいツールとして進化を続けてきました。
本当に使いやすいシステムを現場の皆さんに使っていただき、企業全体として業務の効率化を実現できるよう、これからもHubSpotのプロフェッショナルとして、「現場に近い位置」から企業の皆さんを支援していきたいと考えています。