オフィス移転の考え方とその価値を最大化する方法〜スタートアップ、ベンチャーの移転事情(前編)

ベンチャー企業経営者にとって、オフィス移転は企業規模を大きくさせる際に必要不可欠なイベントであり、オフィス環境は、人材の募集や就労環境、事業運営など経営に大きく関わっている。

そこで、ベンチャーオフィスのブレーン&パートナーとして、数々のスタートアップやベンチャー企業のオフィス移転・内装を手掛ける株式会社ヒトカラメディアの代表高井さんに、オフィス移転時の費用感、気をつけるべきこと、オフィス移転の価値を最大化する方法など、お話を伺いました。



スタートアップ/ベンチャー向けにオフィス移転のプロデュースをされていると思いますが、まずベンチャー企業のオフィス移転事情などを教えてください。

オフィス移転は、新たに人材を募集するタイミングなど、採用に絡むときが多いのですが、ベンチャー企業がオフィス移転をする場合、そのオフィスがコスト対象となるフェーズと、投資対象となるフェーズの二つに分かれます。

例えば、事業をスタートして間もなく縁故採用で人を増やしている段階、また20〜30坪くらいの会社で、登記後一度目の移転というところまでは、“なるべく安く、広いところへ”というふうに、オフィスがコスト対象であることが多く、内装にお金をかけないところがほとんどです。

その後、求人媒体で人を募集するようになり、採用面談や来客時に、どのような印象をもたれるか、ということを考える段階になると、オフィスを“投資対象”とみる企業が多くなります。
スタートアップ系ベンチャーで出資を受けている企業では、事業が黒字化している企業と、戦略として赤字の状況である段階の企業がありますが、黒字化している場合は、比較的早い段階でオフィスを投資対象として捉え効果的に移転機会を活用する企業が多いです。

ベンチャー企業の共通の課題として、会社を立ち上げてからの歴が浅い、または決算の内容が原因で審査が通りにくいということがあります。特にスタートアップ企業の宿命でもあるのですが、資金調達をする場合の多くは売上よりも先に人件費、広告費がかかるビジネスモデルのため、決算上では赤字の企業も多いです。しかし、それが経営戦略であっても、赤字決算というのは不動産オーナーには受け入れられないことがほとんどです。
当社は、審査を通すことに対してのノウハウがありますので、企業の状況や赤字の理由などをオーナーさんに説明し交渉がうまくいくことも多いですが、スタートアップ界隈に詳しい不動産会社は、まだほとんどいないというのが現状です。


オフィスの場合「敷金は家賃10ヶ月分が相場」とよく聞きます。ベンチャー企業にとってなかなかハードルが高いと思うのですが、実際どうなのでしょうか。

オフィスビルへの移転時の敷金は6〜12ヶ月分くらいが相場です。ミニマムでも約4ヶ月分、多いところでは15ヶ月分という物件もあり、この幅は、ビルのサイズとグレードによって変わってきます。イメージとしては、例えば西新宿にあるような高層ビルがハイグレードビルです。グレードが高いと坪数も大きく、オーナーも不動産経営のプロフェッショナルであることが多いので敷金が高い。一方で築40~50年経っていたり、坪数が小さい物件は、敷金が低くなる傾向にあります。

坪数を目安とした敷金の相場は、
・30坪未満の場合、4〜8ヶ月
・30坪~80坪の場合、8〜10ヶ月
・80坪以上の場合、 10〜12ヶ月
といったところでしょうか。

オフィスの坪数を考える際、昔は役員室、会議室なども入れて、1人あたり約3坪換算と言われていましたが、今は、役員室などは特別設けず、会議もオープンスペースで、という企業も増えており、1人あたり2坪換算で考えられる企業も多くなっています。ただし、1人あたり1.5坪以下になるととても狭く、酸素も薄くなってくる感じがして快適な働く環境からは遠のいていきますので、1.5坪以上をキープすることを推奨しています。

オフィス物件の空室状況としては、現在、空室率は5%を切り、エリアやサイズ帯によっては2%台になったとも言われます。3~5年前まではリーマンショック以降の不況をひきずり、空室率10%までいったこともありましたが、景気も戻り、スタートアップ企業が増え資金が市場に出回るようになったことや、拡大していく企業が増えたことで、渋谷の駅近などの物件は、今はほとんど空いていない状況です。


最近「居抜き物件」というものをよく耳にします。オフィスの居抜き物件はどういうものなのでしょうか。


不動産契約では、退去時には借りた時の状態に戻すための“原状回復工事”を行うことが通例なのですが、居抜き物件とは、内装・造作、そして場合によっては什器まで、前に借りていた人の物が残っている、原状回復がされていない物の事を言います。一般的に居抜き物件の場合、壁の造作や照明のレールなど、物件の内装・造作は、移転時に持っていくことが難しいのでそのまま設置され、デスクや椅子などの什器は、次の物件でも使えるため、持って出られる方も多いです。退去者からすると原状回復費が浮くので非常にメリットが大きいです。

店舗などでは当たり前になっている居抜き物件ですが、実はここ2、3年、オフィス物件でも、「借りる側から」のニーズが高まっています。その物件にあった内装がなされており、機能としてそのまま使えるものも多いので、入居者側の内装構築費も浮きますしそのまま使いたいとおっしゃる方が多いんです。

ただオフィスを出る際に居抜きで出ることは、オーナー側からは嫌がられることが多いです。その主な理由として、
・そもそも原状回復することが通例で、居抜きは調整ごとや不明確なことも多いため面倒であったり、イレギュラー扱いされる
・居抜きのオフィスを貸し出し、内装や什器などが原因で怪我などのトラブルがあった際の責任の所在が不明確
・契約終了時の原状回復工事に合わせて、貸室のメンテナンスをしたいと考えている
という3つが挙げられます。オーナーさんにとって、ビル経営を考えたときに、居抜きの物件は手間とリスクがある、と捉えられやすいんですね。

ですので、弊社のお客様が居抜きでの退去を望まれる場合、および居抜きでの入居を望まれる場合は、オーナーさんには募集期間と空室期間を短くできることについて居抜き募集のメリットを理解していただき、現入居者、オーナー、新入居者の3者間で居抜きに関する合意契約を結ぶことで懸念されるリスクを払拭できるようにしています。


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株式会社ヒトカラメディア 代表取締役 高井淳一郎 
名古屋工業大学建築・デザイン工学科卒業。東証一部上場企業である株式会社リンクアンドモチベーションのグループ会社にて、オフィス仲介・構築、ビルオーナー向け新規事業開発に携わった後、上場準備中のベンチャー保証会社にスタートアップメンバーとして参画。2013年5月に株式会社ヒトカラメディアを設立し代表取締役に就任。『「働く場」と「働き方」からいきいきとした組織/個人をふやす』をビジョンに掲げ、現在は主にスタートアップ・ベンチャーのブレーン&パートナーとしてオフィス領域をサポートしている。

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ユナイテッドリバーズ 代表 沢辺氏、CMO 岡崎氏

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