リモートワークでの書類作成をスムーズに。NPOの事業活動をカラーユニバーサルデザイン対応のboardで効率化

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課題

  • 組織の人数が増えてきたことに伴い、販売管理の体制を整えたかった
  • 見積書を外出先で作れず、都度社内で作らなければならなかったため、手間がかかるとともにお客様への提案スピードが遅れてしまっていた
  • コロナ禍への対応のため、リモートワークの体制づくりが急務だった
 

対策

  • クラウドの販売管理システムを導入して、外出先でも見積書を発行できるようにする
  • クラウド会計ソフトと連携させることで、会計業務まで含めてリモートワークが可能な体制をつくる
 

効果

  • どこからでも見積書が作成・送付できるようになり、そのためだけに帰社せずに済むので、かなりの時短が実現できた
  • 「原本の送付が必要なときに郵送サービスがある」「メール送信前にプレビューをその場で確認できる」「送信後も書類へのアクセス可否をコントロールできる」など、細かな部分の作り込みが実務に即していて使いやすい

 

カラーユニバーサルデザイン機構(略称:CUDO、読み方は「クドー」)は、社会を人の色覚(色の感じ方)の多様性に対応して改善していくことで、「人にやさしい社会」の実現を目指して2004年に設立されたNPO法人です。

色覚の多様性に対応した製品や施設・建築物、環境、サービス、情報を提供する「カラーユニバーサルデザイン(略称:CUD、読み方は「シーユーディー」)」の普及活動と情報発信を通じ、社会の色づかいを誰でも分かりやすいものに変えることで、どのような色覚の人でも安心・安全に暮らせる社会をつくるために活動しています。

boardも2019年5月、より多くの方に快適に活用していただけることを目指し、CUDの認証を取得しました。

そのようなご縁から、CUDO様には以前からboardの存在を知っていただいていましたが、普段の業務でも案件管理の効率化やリモートワークの体制に課題を感じられていたということで、boardを導入していただきました。

「実際の業務でboardを使ってみたら、ジワジワと良さが分かってきた」という、副理事長の伊賀公一さんにお話を伺いました。

 

事業活動における案件管理とリモートワーク対応が課題に

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CUD認証の際には大変お世話になりました。boardについてはその際に知っていただいていたかと思いますが、そこから実際の業務で導入されるまでの背景を教えてください。

課題としては2つありました。1つめは、組織の人数が増えてきて管理体制を整えたかったこと。2つめは、リモートワークに対応できるようにしたかったことです。

団体を設立した当初は、私が自分でシステムを組み、案件の進捗管理や書類作成を行っていました。初めは職員が少なかったので大きな問題はなかったのですが、その後、職員が増えてきたことに合わせて、管理体制を整えるために販売管理の専用ツールに切り替えていました。

しかし、そのツールはクラウドに対応していなかったので、社内でしか使えなかったのです。

たとえば、訪問先で先方から「急ぎで見積書を作ってほしい」と言われた場合、事務所へ電話をかけて、「〇〇さん宛に急ぎで見積書を作って、メールで送ってもらえる?」と伝えて送ってもらうしかありませんでした。

職員からは「社外でも見積書を出せるようにしてほしい」という要望が以前から上がっていました。

加えて、コロナ禍に突入してリモートワークの実施も急務となりました。そこで、まずクラウド会計ソフトを導入して、会計業務を在宅でも行えるようにしました。

その会計ソフトでも見積書や請求書の作成はできたのですが、販売管理の機能はありませんでした。書類は作れても案件の進捗は管理できず、「まだ受注が決まっていない見積書をいくつも作成する」といった用途では使いづらいという問題もありました。

そのような経緯でクラウド会計ソフトと連携できる販売管理ツールを検討していたときに、「そういえば、先日CUDの検証をした『board』があるじゃないか」と気が付いて、自分たちで認証したツールならすでに誰でも使いやすい色づかいになっているし、とりあえず使ってみようという話になりました。

 

CUDの検証の際にもboardの仕組みについては詳しくご確認いただいたと思いますが、実務で使ってみていかがでしたか?

検証のためには当然中身を知らなければなりませんので、「使い倒す」という感じで詳細まで確認をしています。そのおかげもあって、導入はスムーズでした。でも、実は検証していた当時から「このツールは便利そうだね」という声はあったんです。実際に使っていく中でその良さがジワジワと分かってきました。

たとえば、書類をメールで送信する際には本文や添付書類の中身をプレビューできるので、送ろうとしている内容に間違いがないかその場で確認できます。

『送信予約』の機能を使えば、「しまった、間違えた!」というときにも取り消すことができますし、書類の送付方法を『ダウンロードページ方式』にすれば、後からアクセスの可否をコントロールすることもできます。

取引先によっては、データではなく紙の書類を求められることもありますが、その場合も郵送代行機能で対応できます。

このような細部の作り込みを見て、「実際の業務のことをよく分かってる人が作っているんだな」と感じました。

課題だった見積書についても、以前は帰社してから作って・印刷して・押印して・送る、とやっていたものが、その場で数字を入れてボタン1つで送れるようになりました。かなりの効率化を実現できていると思います。

 

NPO法人の業務は、一般の企業とは異なる点もあるかと思いますが、boardをどのように使われていますか?

CUDOはNPO法人ですが、収益事業の案件管理でboardを活用しています。

依頼を受けたら提案書や見積書を出し、受託が決まったら発注書・発注請書のやり取りをして、受託案件が終了したら請求書を出すという流れですが、これは一般企業における案件管理と大きくは変わらないと思います。

NPOとは“特定非営利活動法人”の略ですが、この言葉のイメージから「利益を上げるような事業活動は行ってはならない」と思われている方もいらっしゃいます。しかし実際はそうではなく、「利益を団体の構成員に分配してはならない」「利益を主たる事業活動に充てなければならない」という意味です。

CUDOにはいくつかの事業がありますが、収益事業で得た利益を使って「無料の色覚相談窓口」などの非収益事業を行っています。

近年はCSR活動に力を入れている一般企業も増えていますし、社会貢献そのものを事業目的とした企業もあります。「事業で得た利益で社会に貢献する」という点では、NPO法人と一般企業の活動は重なる部分も多いのです。

 

いろいろな「色の見え方」があるのは当たり前

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“CUD”や“色覚”について、あまりなじみがない方もいらっしゃると思いますので、教えていただけますか。

CUD(カラーユニバーサルデザイン)とは、人間の色覚の多様性に対応し、より多くの人が利用しやすい配色を施した製品や施設・建築物、サービス、情報を提供するという考え方のことです。

「人間の『色』の見え方はみんな同じ」だと考えている方が多いと思いますが、実際には、赤・緑・青の光の感じ方は少しずつ異なり、目の中の“錐体(すいたい)”という色を受け取る細胞の持ち方によって以下のようなタイプに分かれます。

  • C型:赤・青・緑の3種類の光を受け取る一般的な細胞を持つ。
  • P型:赤の光を受け取る視細胞が無い(強度)、または、緑の光を受け取る視細胞の特性に近い赤い光を受け取る視細胞を持つ(弱度)
  • D型:緑の光を受け取る視細胞が無い(強度)、または、赤の光を受け取る視細胞の特性に近い緑の光を受け取る視細胞を持つ(弱度)
  • T型:青い光を受け取る視細胞が無い
  • A型:赤・緑・青の光を受け取る視細胞を一つ持つ。または、赤・緑・青を受け取る視細胞を持たない。明暗でしか色を感じることができない

C型の人を『一般色覚者』、それ以外を『色弱者』と呼んでいますが、日本眼科医会の調査によると日本人男性の約5%は色弱者だと言われていて、これは「名字が佐藤・鈴木・高橋の人」の合計の割合(4.11%、2018年7月1日概算値。総務省統計局2018年7月20日公表資料より)よりも多いのです。そう考えると、色弱者がどれほど身近な存在なのかが分かるのではないでしょうか。

それだけ多くの色弱者がいるのに、これまでモノづくりでは“色”についてあまり配慮がされてきませんでした。

もとをたどれば、昔はテレビも白黒、映画も写真も新聞も、基本的には白黒だったんですね。それがテレビや映画や写真はカラーになり、1995年頃からはカラープリンターが普及して、誰もが安くカラー印刷ができるようになっていきました。そして今では、街中の看板を見ても色数が増えて、色が氾濫してしまっています。

たとえば、“東京の地下鉄の路線図”では路線がさまざまな色で表現されていますが、色弱者にとっては「同じ色に見えて区別がつかない路線」もあります。駅構内の案内表示も、線が細かったり色あせていたりすると違う色に見えてしまい、目的地までたどり着きづらいことも多いです。

 

業務において、CUDに対応していないシステムを使用している場合、どのような問題がありますか?

システム上で、色はサイトの“イメージ”のために使われるほかに、“強調”や“分類”のために使われています。これらの見分けがつきづらいことが、仕事の“やりづらさ”につながる懸念があります。

たとえば、Webサイトやドキュメントでは、“注意書き”や“エラー”を強調するために赤字が当たり前に使われています。皆さんも資料を作るときに、強調したい部分で赤色を普通に使っているのではないでしょうか。

ところが色弱者にとっては、赤と黒が同じ色に見えてしまい、強調の意味を成さなくなってしまうのです。強調したい箇所が太字の赤であればまだ良いのですが、最近は「デザインをスッキリさせたいから細字の赤を使う」というケースも多く、その場合は本当に見分けがつきません。

また、「カテゴリー分け」や「グラフの凡例」などを文字や模様ではなく、色によってのみ分類している場合は、見分けがつきづらくなってしまいます。

先ほど「日本人男性の約5%が色弱」という話をしましたが、業務で毎日使うものを使いづらく感じる人が一定数いるということは、業務の効率性から見ても無視できないのではないかと思います。

 

社会の色づかいを変えることで、誰もが安心・安全に暮らせる社会をつくる

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現在、CUDはどれくらい広がっているのでしょうか

近年は“アクセシビリティ”の向上に取り組む自治体や企業が増えており、CUDの認知度も着実に上がっています。知識としては広がってきているので、今後はさらに「CUDに対応しよう」と思って取り組んでくれる人が増えてゆけば良いなと思っています。

資料を作るときの色づかいもそうですが、「少しでも多くの人が見やすい色づかいにしよう」と関心を持つ人が増えることが、社会を変えていくことにつながると思います。

 

最後に、今後の事業の展望を教えてください。

かつては、色覚の違いを『色覚異常』や『色盲』と呼んで差別していた時代もありました。しかし、近年の生命進化学の見地では、「人の進化の過程で『多様な色の見え方がある』ことが有利だったから色覚が多様化したのであり、その中の特定の色覚だけを指して『異常』と言うことはできない」という考え方が主流になっています。

つまり、性別や血液型と同じで、“色覚”にもいろいろなタイプの人がいて、当たり前に共存しているものなのです。どのような色覚の人でも、自分の色の見え方に誇りを持って暮らせる社会にしましょうというのが、私たちCUDOの目指すものです。

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