中小企業向けバックオフィスおまかせサービス「Brownies Works」では、その仕組みの一部としてboardを活用していただいています。同サービスを提供するリベロ・コンサルティング代表の武内さんに、boardを採用することになった経緯や中小企業の業務課題・解決策などについて伺いました。
貴社の事業内容について教えてください
業務設計コンサルティングの事業と、「Brownies Works」という中小企業のバックオフィス業務設計と運用をパッケージでお届けする事業を行っています。
コンサルティング事業の方では、企業の顧客管理や請求・支払、会計業務などの業務プロセスの設計からシステム構築までを一気通貫で請け負っています。主なクライアントは、従業員が数百人規模の会社です。
もう1つのBrownies Worksは、2019年末からスタートした新しい事業で、数人~数十人程度の中小企業向けに、バックオフィスの業務設計や運用を丸ごと請負い、バックオフィス業務のベストプラクティスを提供するサービスです。
「業務設計士」とは、どのようなことをするのですか
「業務設計士」は最適な業務プロセスを構築する専門家のことで、私が勝手に作った職務の名称です。
私は金融業界で新商品の業務フロー設計やシステム要件定義などを担当した後、税理士試験の勉強をしながら会計事務所で働きました。その時、アナログでぐちゃぐちゃな情報を処理するために、スタッフが膨大な時間を割いている様子を見て、その非効率さに驚き、税理士がその知識や専門性を活かすには、その前段階のプロセスから業務を再構築する必要があると感じたのです。
しかし現実的には、経理や会計業務に精通する人が、日々の業務を行いながら様々なサービスを試したり、最適な業務プロセスを設計したりすることは難しい。
それなら、いろいろな業務やサービスを理解する専門家が、その部分を外部からサポートできたらいいのではないかと思い、部門を超えた一気通貫の業務フローを再構築する役割を「業務設計士」と名付けました。
今後はBrownies Worksとともに「業務設計士」という新しい役割を作っていきたいと考えています。
Brownies Worksについて、教えてください
バックオフィス業務の効率化を目指した際に生まれるミスマッチは様々です。たとえば、「SaaSを利用したくても、選択肢がたくさんあってどれを使えばいいかわからない」、あるいは「導入したのは良いけれど使える人がいない」といったケース。業務とツールの両方に長けている人材は少なく、結局ツール導入の成功事例は属人的なスキルによるものであることも多いです。
また、ツールを開発して提供する側も、現場の具体的な業務内容まできちんと理解することは難しかったり、代理店や販売会社も販売が目的になってしまったりして、本来の課題解決まで手が届きにくいのが現状です。
そういった状況に対して、改善案やツールを提示するだけでなく、運用までを含めて提供できれば、「ツールの選定」「運用リソースの確保」「ツールの活用支援」という三軸を同時に解決できるはずだと思いました。そして、それを実現するために生まれたのがBrownies Worksです。
Brownies Worksでは、使用するツールは弊社主導で選定します。現状のヒアリングは行いますが、最も重要な業務フローの設計もすべて弊社が主導します。また、それらの運用を行うのも弊社自身なので、企業内の人材が新しいツールや運用に習熟する必要もなくなります。弊社で蓄積した業務設計のノウハウをパッケージ化し、その形でバックオフィス業務をまるっとお任せいただくスタイルです。
バックオフィス業務は、評価制度構築・採用活動などの社内のコア人材がやるべき領域と、給与計算や経理処理などの外注しやすい領域に二分できますが、後者を一括して任せていただくのがBrownies Worksのモデルです。バックオフィスの人材不足等の状況に直面した企業に対して、採用、派遣に続く「第三の選択肢」になることを目指しています。
Brownies Worksでboardを採用した背景を教えてください
まず見積書・発注書・発注請書・納品書・検収書・請求書・領収書という「これが出力できたらいいな」と思う帳票をほぼ全部出せることですね。他の請求書作成サービスでは、このうちの一部しか出せないことがほとんどです。
案件単位で管理できて、複数の請求書を合算請求できるのも良いですね。ビジネスでは見積書と請求書が「1:1」のケースばかりではなく、たとえば毎月一定額を請求するような場合、見積書は1年分を提示して、請求書は毎月発行する「1:N」のケースもよくありますから。
また、freeeとの相性も良く、請求書をboardで発行するだけでfreeeに売上の取引が連携されるので、まったくストレスがありません。
両方とも単なる「ツールの提供」ではなく「業務を効率化する」という思想のもとに作られているので、シームレスに連携できます。freeeの請求書機能の弱いところを、boardがうまく補完している感じですね。中小企業の請求と入金管理業務はboardとfreeeで事足りるんじゃないでしょうか。
会計システムにfreeeを採用した理由を教えてください
APIの公開に積極的で、プラットフォームとして様々なものと繋がろうという思想に共感しています。先ほどの請求書機能の話もそうですが、コアではない機能を他のサービスと簡単に連携できる会計ソフトは今のところfreeeしかありません。また、freeeは「仕訳」ではなく「取引」をベースにシステムが作られています。boardも個別の「書類」を作るのではなく、業務の流れを意識した「案件」がベースになっているので、そういう思想の面でもフィットしやすいのでしょうね。
Brownies Worksでやろうとしていることは、「ベストプラクティスに合わせて業務を変えていく」というERPの世界観を中小企業のケースに落としていくことなんです。複数のSaaSを流動的に組み合わせてこれを実現するのですが、freeeがAPI連携に対応していて、オープンなプラットフォームを標榜しているからこそできることだと思います。
今後の中小企業におけるバックオフィスは、どのように進化していくとお考えですか
近い将来、単純作業を人手で賄うことは難しくなると思います。その時のために、経営者はバックオフィスはコストセンターであるという発想から脱却して、バックオフィス業務を投資の対象としてどう設計するかを考えていかなければいけません。これまでのバックオフィス業務に対する認識は「やらなきゃいけないから仕方なくやる」というものが多かったと思いますが、今後はその定義も求められるスキルも変化していくでしょう。
Brownies Worksでは、良いサービスを探し、使い倒すことで、弊社側の開発コストを抑えつつ、満足度の高いサービスを作っていきたいと思っています。
そうやって様々なSaaSを適切に組み合わせて効率化を推し進めると、みなさんが想像するより遥かに大きな成果を上げられるようになります。これまで10時間かかっていた作業が1時間で、あるいはもっと短い時間でできることもあります。
今はバックオフィスに対してそこまでの成果を求めている経営者は多くありませんが、boardやfreeeなどの優れたSaaSの台頭によって、バックオフィス業務に対する考え方も少しずつ変わってきていると感じます。
boardへの要望があればお聞かせください
今のboardは、1つの取引に1つの勘定科目を割り当てるようになっていますが、freeeでは請求書の明細1行ずつに勘定科目や部門を設定することができます。つまり、freeeの方が管理のレイヤーが一段深いので、freeeと緊密に連携するのであれば、請求書ごとではなく明細ごとに勘定科目を分けられるようになると嬉しいですね。
boardはどういった会社にお勧めだと思いますか
boardに業務を合わせられる、商習慣を含めてフィットさせられる会社が向いていると思います。また、見積書、発注書、発注請書などをすぐに発行できるので、そのような書類のやり取りが厳格に求められる業界でも効果は大きいと思います。
最後に、御社の今後の事業の展望をお聞かせください
起業家や経営者にバックオフィス業務を理解する人が少ないように、税理士、社労士などの士業とITサービスとの距離が遠いという問題もあります。その結果として、スタートアップが専門家に求めるITリテラシーと、実際の専門家が乖離している状況もあるので、この距離を埋めていきたいと思っています。
Brownies Worksとしては、ツールを駆使した徹底的な業務効率化に尽力していくつもりです。企業がコア事業に注力する際の頼りになる存在として、またこうした考え方をもっと多くの人に知ってもらいながら、バックオフィス業務とそれに関わる業界に意識変化をもたらしていきたいです。
インタビュー後記
今回は通常の事例インタビューとは異なり、boardを社内でどう活用しているかといったテーマではなく、「バックオフィス支援」というサービスの中で、どのようにboardを活用しているかという視点でお話を伺いました。
中小企業のバックオフィスには様々な課題があり、その解決に取り組む「Brownies Works」の設計思想には共感できる部分が多くありました。そして、そのサービスでboardが採用されていることをとても嬉しく感じました。
boardではこれまで、「すべての取引は最終的に仕訳に落ちる」との考えから、2014年12月からfreeeとのAPI連携機能を提供したり、2019年には大幅な機能拡張を施した会計連携機能をリニューアルしたりと、「会計システムへの連携」に力を入れてきました。「Brownies Works」はそのようなboardの機能を最大限に活用しながら業務の最適化を目指していて、その意味でも今後の展開が非常に楽しみです。
インタビューでも話題に挙がりましたが、人口減少フェーズに入った日本では、とくに中小企業において、人手を確保することがさらに難しくなっていくと考えられます。そのような中で、会社の運営に不可欠なバックオフィス業務をきちんと設計し、できるだけ人手がかからない仕組みにしていくことは、今後の経営において非常に重要な課題になると考えています。