アナログな情報共有を脱却し受発注の管理体制を確立。中小企業の再成長をデジタルで支える

インタビューイー竹内さん・野瀬さんの写真

課題

  • 受発注の情報が口頭や紙でやり取りされ、管理する体制がなかった
  • 請求や支払いのたびに受発注の担当者への確認が発生し、やり取りが煩雑だった
  • 導入済みのクラウド会計ソフトでの管理も検討したが、専用の機能がなかったためうまく管理できなかった
 

対策

  • 受発注に関する業務プロセスを再構築し、ルールを徹底する
  • 受発注管理に特化した機能を持つシステムを導入する
 

効果

  • boardで受発注の業務プロセスが整い、フロントとバックオフィスのコミュニケーションが大きく改善された
  • boardにデータが蓄積されることで、過去の見積もりを参考にしたり、請求や支払いの状況を担当者でなくても把握できるようになった
  • 今回の事例を成功モデルとして、同業種への支援に展開したい

 

くじらキャピタル株式会社は、デジタル変革(DX)で中小企業の再成長を支援する日本初の「DXバイアウトファンド」を運営する会社です。

後継者問題や労働者不足、生産性向上に課題を抱える中小企業に出資を行い、経営者を派遣。デジタル化を前提とした業務全体のプロセスの見直しと、クラウドツールの導入による業務改善を実施し、企業の再成長を実現するとともに事業承継の問題にも取り組んでいます。

今回、くじらキャピタルの出資先として、board導入の1例目となる株式会社アーバンビルシステム(ビルメンテナンス業)への導入事例について、インタビューにご協力いただきました。

くじらキャピタル代表取締役の竹内真二様と、アーバンビルシステム代表取締役の野瀬直樹様にお話を伺いました。

※竹内様はアーバンビルシステムの取締役を、野瀬様はくじらキャピタルのCTOを、それぞれ務めていらっしゃいます。

 

営業拡大に備え、受発注フローの管理体制整備が必要に

board導入の背景を教えてください

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<竹内さん>

くじらキャピタルは、中小企業への投資を専業にしていること、デジタル化により業務改善を行うことの2つに特徴があります。

バイアウトファンドの場合、支援にかかる手間というのは企業規模に関わらずほぼ同じなので、基本的には「金額が大きい方が投資効率がよい」ということになります。

ファンドは投資家の方からお預かりした資本で投資運用をしますから、出資者の期待に応えて利益をしっかりと還元するためには、当然「より効率のよい投資を行うべき」という力学が働きます。そのため、一般的なバイアウトファンドの投資対象は大企業になることがほとんどです。

私もファンドマネージャーとして数々の大型案件に携わってきましたが、その中で「日本企業の97%は中小企業であり、本当に支援を必要としているのはそちらの方が多いはずなのに、資本や支援の手が届いていない」という問題意識を感じていました。

そこで、当社はデジタル化を前提として業務プロセスを構築し、それを型化して横展開することで支援の再現性を高め、中小企業であっても投資効率を上げられる体制を作りました。

バックオフィスについては、クラウドの会計ソフトや人事労務ソフトなどを組み合わせることで効率的な業務プロセスを構築しています。

今回は、当社の出資先であるアーバンビルシステムが抱えていた業務課題に対してboardが有効活用できそうだと考え、野瀬が主導して導入を実施しました。

 

インタビューイー野瀬さんの写真

<野瀬さん>

私はもともとアーバンビルシステムの代表を務めていましたが、出資検討の際に竹内が語る理念に共感し、出資を受けると同時にCTOとしてくじらキャピタルにジョインしました。

 

当時、アーバンビルシステムでは「受発注フローの管理」に課題がありました。

boardの導入前は、昔ながらの口頭での連絡や紙の書類、表計算ソフトで管理をしていました。たとえば、新しくビルメンテナンスの定期契約が決まると、フロントの担当者が「新しい案件が決まったよ」と経理担当者に電話連絡し、請求日が来たら経理が請求書を出す、といった流れです。

実際に経理がどうやって受注情報を確認していたかというと、口頭で伝えられた内容を手元にメモしたり、表計算ソフトで作った「請求リスト」に自分で打ち込んでおいたりしたものを元に請求書を作っていました。

ビルメンテナンスは年単位での定期契約が多く、毎月同じ内容の請求書を発行するので、今まではそれで何とかなっていましたが、スポットの案件や途中で失注になった案件では抜け漏れが発生するリスクがあり、今後は営業活動が拡大する兆しもあったため、このままの状態で件数が増えていったらいつか破綻することは目に見えていました。

その対応として、初めはクラウド会計ソフトで管理することも検討しましたが、受発注の管理機能が付いているわけではなかったので、かなり工夫しなければなりませんでした。また、経理以外のスタッフが会計データに直接アクセスできるのは内部統制上も問題があるため、何か良い解決策がないかと試行錯誤していたのです。

 

boardはどのような経緯で知りましたか?

<竹内さん>

くじらキャピタルの支援が入る際に顧問税理士が変わったのですが、その方がITに詳しくて、boardを紹介されました。

ただ、当初は「受発注の管理ができるツール」として紹介されたわけではなく、「boardで請求書を発行すると集計しやすくて便利だよ」という管理会計的な観点からの紹介でした。

 

<野瀬さん>

紹介されたときは、すでにクラウド会計ソフトで請求書を発行していたので、「便利だよと言われても請求書発行ツールは間に合っているし……」というのが正直な感想でした。

しかし、boardのことを調べていくうちに、これは単なる請求書発行ツールではなさそうだということに気が付きました。そしてboardの案件管理機能は、当社のビルメンテンナンス事業の受発注管理にもかなりフィットしそうだと思い、導入を決めました。

 

boardでフロントとバックオフィスのコミュニケーションが大幅に改善

実際の業務ではboardをどのように利用されていますか?

<野瀬さん>

フロント3名と経理1名で利用しています。boardを使うことでフローが明確になり、曖昧だった運用もルール化されたことで、受発注に関わる社内コミュニケーションがかなりスムーズになりました。

boardは案件単位で受注ステータスを管理できるので、これをフル活用しています。

受注では、フロントの担当者には『boardに案件を登録し、請求してよい状態になったらステータスを「請求OK」に変えるように』と伝えて、経理の担当者には『「請求OK」の通知が届いたら内容をチェックして請求書を発行するように』といった形で、それぞれの役割ごとに明確な指示を出せるようになりました。

発注では、取引先からの請求書は経理宛に届くので、従来はその後に「これは何の請求書か」「請求どおりに支払っても大丈夫なのか」ということをフロントに都度確認しなければなりませんでしたが、board導入後はboard上で発注情報を確認すれば済むようになり、もし登録がなかった場合でも責任の所在がわかりやすくなりました。

また、必要なタイミングで「請求一覧」「支払一覧」を確認するようメールで通知されるので、boardに登録することを徹底すれば「受注したことを伝え忘れて請求漏れが発生する」ということも起こりません。フロントとバックオフィスの情報共有は従来と比べものにならないくらい緊密になったと思います。

boardはモバイル対応もしっかりしていて、フロントの担当者が出先でスマートフォンから案件を登録したり、見積書を作ったりと便利に活用しています。

また、ステータスを「請求OK」に変えた後は金額を変更できないよう自動でロックできるなど、細かな点まで気が利いています。このように、boardは「困ったな、こういうことができないかな」と思って調べてみると、すでにその機能が搭載されているということが多いので、実務をよくわかっている人が作っているのだなと感じます。

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<野瀬さん>

もう1点、導入して良かったと感じたのは、boardに蓄積されたデータを活用できるということです。

たとえばフロント側では、boardには過去の見積書のデータが蓄積されているので、新たに見積書を作る際に過去の似た案件を探してきて参考にできます。

バックオフィス側では、boardを見れば受発注の情報や請求・支払いの状況が明確ですので、人員が増えた際の情報共有も簡便です。

くじらキャピタルから出資を受け、私自身がCTOとしてジョインした時点で、「まずは自分たちのデジタル変革をしっかり成し遂げなくては」と思っていましたので、こうしてデータを活用できる体制を作れたことはとても良かったと思っています。

 

boardとビルメンテナンス業との相性はいかがでしょうか?

<野瀬さん>

会計や人事労務などの汎用的なツールであればミスマッチは少ないのですが、受発注管理など業務特化型のツールは自社に合うものを見つけるのが難しく、「50〜60%ぐらい合っている状態で我慢して使う」ということが多いです。

その点で、boardは80%〜85%ぐらい合っている実感があり、とても使いやすいです。とくに定期請求の機能などは非常にマッチしていると思います。

ビルメンテナンス業に限らず、BtoBの受託事業や定期契約がある業態ならマッチしやすいのではないでしょうか。

 

<竹内さん>

今回の事例では、情報共有や属人化の解消が進んだことで、今後売上規模が大きくなっても耐えられる体制を整えることができました。

さらに、boardのダッシュボード機能は出資先からの報告を受けたり状況を分析したりするときにも活用できます。これは、出資を行っている側から見て非常に良かった点です。

くじらキャピタルは今後、ビルメンテナンス業への出資を2社、3社と増やしていきたいと考えていますので、今回のアーバンビルシステムでの事例を成功モデルとして、自信を持って進めていけるのではないかと考えています。

 

資本とデジタルの力で中小企業の再成長を支える

アーバンビルシステム様としての今後の展望を教えてください

<野瀬さん>

まずはアーバンビルシステムとしてしっかり利益を出し、出資いただいた方に利益を還元できる体制を作っていきます。

具体的には、バックオフィス側の業務プロセスはboardをはじめクラウド会計ソフト・人事労務ソフトを活用して業務改善が進んできましたので、次はフロント側の業務、たとえば「メンテナンスを実施した際の報告業務」などの効率化を進めていきたいです。

また、先ほど「boardに蓄積されたデータの活用」について述べましたが、これをもう一歩進めて、BIツール活用などデジタル変革をさらに進めていきたいと考えています。

そして先ほど竹内が述べたように、これらのアーバンビルシステムでの取り組みを他の出資先へ横展開していけるよう、CTOとして取り組んでいきたいです。

 

くじらキャピタル様としての今後の展望を教えてください

<竹内さん>

私は「資本とデジタルの力で日本の中小企業を変えていきたい」という志を持って、くじらキャピタルを創業しました。

中小企業庁の公開資料*によれば、2025年の時点で70歳を越える経営者は245万人、うち127万社(日本企業全体の約30%)は後継者が未定の状態であり、廃業によって多くの雇用や経済利益が失われると予想されています。

*中小企業庁:「事業引継ぎガイドライン」改訂検討会(第1回)「資料3-1:中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題

当社にも現在、1日に30〜40件の支援の相談が舞い込んできます。こうした企業に内情を伺うと、DXとはほど遠く、「メールアドレスが会社に1つしかない」「Webサイトが何十年も更新されていない」といったことも珍しくありません。

ただ、そんな状態でも数十年にわたって100名以上の雇用を維持していたり、かなり強固な顧客基盤を持っていたりします。つまり、事業自体にはとても魅力があり、業務を改善しさえすれば再成長のポテンシャルを秘めた企業が多いのです。デジタル化が遅れているからこそ、デジタル活用による伸びしろが大きいと考えています。

当社が支援に携われる数はまだまだ少ないですが、今後も資本とデジタルの力を駆使して1社でも多くの企業の再成長を実現し、この国の将来にインパクトを与えられるようなファンドになっていきたいと考えています。

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