クラウド請求書作成ソフト(インボイス制度・適格請求書対応)、見積書発行、販売管理ツール - board

board導入と運用見直しのセットでバックオフィスの業務を改善

インタビューイー乙津さんの写真

課題

  • 設計や工事を行う事業では、見積もりを何パターンも作成するため、「最終的にどの見積もりを元に受注したのか」を確認するために多大な時間を要していた
  • 賃貸を行う事業では、毎月同じ金額・明細で請求書を発行するため、「どの請求書が何月分なのか」の管理が煩雑になっていた
  • 多様な事業を行っており、メンバーのリテラシーもバラバラなため、運用ルールを定めても徐々に崩れ、徹底が難しかった
  • 会計ソフトへのデータ入力がすべて手作業で行われていたため、月次決算を締めるのに時間がかかっていた
 

対策

  • 見積書のバージョン管理をシステム化する
  • 数字データを見積→請求→会計へと自動的に連携できるようにする
  • 業務の運用体制を見直し、リテラシーの差をカバーできる体制を作る
 

効果

  • board導入前は「最終的にどの見積もりを元に受注したのか」の確認だけで丸1日かかることもあったが、ほぼゼロになった
  • 請求処理が終わると自動的に会計ソフトにデータが連携され、照合作業が1件あたり2〜3分で済むようになった
  • boardの導入と併せて運用体制を見直したことで、工数が減っただけでなく、ミスも減らすことができた

 

ヒトカラメディアは、オフィス仲介やオフィス内装空間のプロデュースなどの事業をメインに行うベンチャー企業です。ミッションとして『「都市」と「地方」の「働く」と「暮らす」をもっとオモシロくする』を掲げ、“働く場”や“働き方“に関する多彩なサービスを提供しています。

2022年12月には、新たに「不動産開発支援」と「地域活性化支援」に関する新事業を立ち上げるなど成長が著しい一方で、案件数の急増に伴い見積〜受注〜請求の管理が課題になっており、これを解決するためにboardを導入しました。

機能だけでなく、その思想に深く共感してboardを使っている」という、CFOの乙津康人さんにお話を伺いました。

 

「正しい見積書を1日中探し回る」ような状況

board導入の背景を教えてください

事業の拡大に対応できるよう、私が管轄する管理部門でも業務の改善が必要になっていました。課題は大きく分けて2つです。

まず1つ目は、見積もりの管理です。

オフィス工事の見積書には、建具から塗装、内装、電気や空調の設備まで、とても多くの明細が載ります。そして、受注に至るまでに複数回の見積もりをするのが一般的です。

たとえば、「壁紙をこっちの色に変更したい」「照明の数を増やしたい」といったように、備品の種類や数が何か1つでも変われば見積もりを作り直すんです。

多いときには、1つの案件で10パターン以上の見積もりが作られることもあります。しかも微妙な違いで似た内容のものが複数ある。すると、「最終的にどの見積もりを元に受注したのか」が分からなくなってしまうんです。

そのため、経理が請求書の発行を依頼された段階になって、「この請求はどの見積書が元になっているのか?」を探し回らねばならないという状況でした。

営業の方たちも複数の案件を抱えて忙しいので、1件1件こと細かに覚えていることなどできません。

「どの見積もりですか?」
「……どの見積もりでしょうね?」
「これですか?」
「いや、こっちかな」

といったやり取りが、営業と経理の間でしょっちゅう交わされていました。1つの見積書を確認するのに丸1日かかることもありましたね。

2つ目は、会計ソフトへの入力作業です。

見積書や請求書は別々のツールで作っていたのですが、会計ソフトと連携していなかったので、各ツールからCSVでエクスポート→インポートできるように、加工してから会計ソフトへインポートするという手作業が必要でした。

ただでさえ上流の見積もりや請求が混乱しがちなのに、やっと数字が決まったと思ってもその先が手作業なんです。

事業の拡大とともに処理しなければならない件数も着実に増えていくなか、この状況を改善する必要がありました。

 

boardの導入前にも、いくつかツールを試されていたそうですね

はい、段階的に検討を重ねていました。

たとえば、営業側で管理してもらえるように新しい見積書ツールを入れてみたり、ノーコードツールを使ってシステムを自作してみたりもしましたが、解決までには至らなかった。

そうやって自分でいろいろ試してみた上で、一度他の人にも聞いてみようと思って、たまたま業務改善のコンサルタントをしている知人がいたので相談を持ちかけたんです。「見積もりや請求がうまく管理できて、会計ソフトとデータ連携もできる。そんな都合のいいツールないかな?」と。そうしたら、「ピッタリのものがある」と紹介されたのがboardでした。

 

boardの第一印象はいかがでしたか?

画面や初期設定の導線が、シンプルでとても分かりやすいと感じました。

業務用ツールの画面は、メニューや検索項目がてんこ盛りでゴチャゴチャしているものが多いですよね。「この項目は絶対使わないから画面から消したい」と思っても設定が変えられない、とか。それに比べて、boardは画面がとてもスッキリしているなと思いました。

初期設定の流れもとても分かりやすかった。何から始めればいいのかが画面上に書いてあるので、「あ、まずは顧客の登録からなのね」という感じで、すぐに分かりました。

私は業務用ツールを選ぶときに大切にしている観点があって、それは、「誰が使っても分かりやすいUI・UXか」ということなんです。

たとえば、先ほどの「顧客登録」。他のツールだと「顧客マスター登録」と言うことが多いですよね。

もちろん、システム用語として「マスター」は一般的ですし、ITツールの扱いに慣れていれば理解できます。でも、実際に業務でツールを触る人がみんなリテラシーが高いとは限らないんですよ。「マスター」って言われただけで取っつきにくさを感じてしまう。

取っつきにくいと思われたら使われなくなっちゃうんです。いくら高機能なツールだとしても、使われなければ意味がないですからね。

 

ツールの新規導入においては、「実際に業務で使う人のリテラシーに配慮すること」が大切なのですね

北風と太陽ではないですが、「使え!」と命令して使ってもらえるなら誰も苦労はしません。自然と使ってもらえるような、「いかに使ってもらえるか」という観点が大切だと思います。

その点でboardは、横文字をなるべく使わないとか、何でもヘルプページに誘導するのではなく、操作画面上に説明が書いてあるとか、実際に現場で使う人のことを本当に考えて工夫してるんだなと感じましたね。

 

壁を乗り越えるためのポイントは「運用の見直し」

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boardを導入して、メンバーの方の反応はいかがでしたか?

実は、初期の頃にデータの入力が正確に行われなくて、boardでの運用が崩壊しかけたことがあったんです。

たとえば、顧客名の前株と後株が逆転していたり、「株式会社」じゃなく「(株)」になっていたり。boardの画面には、ちゃんと「正式名称を入力してください」って書いてあるんですよ。でも、正確なデータを入力してもらえない。

リテラシーの高い人は問題なく使えるんです。でも、そこにはやっぱり個人差があって。当社は伝統的産業(不動産業や建設業)なので、アナログ派の人やITツールに苦手意識がある人も多いんですよね。

「見積〜請求」は、ちょうど営業と経理の間にある業務なので、とくにリテラシーの差が出やすいんじゃないかと思います。

 

「リテラシーの差」は、多くの現場でぶつかりやすい壁だと思います。どのように乗り越えたのですか?

運用体制を見直すことで乗り越えました。

先ほどの「顧客登録」の例だと、リテラシーの高い・低い関係なく「営業さんで入力してね」としていたものを、得意な人を担当者と決めて入力してもらうようにしました。その結果、boardのデータがすごくキレイになりました。

それまでは、自分を基準に考えていたんですね。「boardはこんなに分かりやすいのだから、当然データもちゃんと入力されるだろう」と。

でも、自分は新しいもの好きでITツールも得意だけど、みんながみんなそうじゃない。自分一人ではなくチームで使うのであれば、キレイなデータが入力されるように運用もセットで整えねばならないと、ピンチを目の当たりにして気が付きました。

 

boardの導入と運用の見直しによって、現在はどのような効果が出ていますか?

冒頭に「正しい見積書を1日中探し回っていた」という話がありましたが、それがほぼゼロになりました。

会計ソフトへの入力も、board側で請求作業が完了すると自動的にデータが飛んできます。boardの案件Noが会計ソフト側にもメモとして入力されるように設定してあり、念のためにその照合は行っていますが、1案件に対して2〜3分しかかかっていないと思います。

ですので、1件を処理するためのコストで換算すれば、数百分の一にできたかなと。

 

業務改善とは「一気にやろうとすると失敗する」もの

boardはどのような会社にお勧めだと思いますか?

まずは、「経営者がぜんぶ自分でやっている」ような小規模の会社ですね。Webサイトに掲げられている「バックオフィスのために起業したのではない」というキャッチコピーがいいなと思った人は、まさにお勧めだと思います。

他には、「一部分でもいいから改善したい」と思っている人にもお勧めです。

 

「一部分でも」というのは、どういうことでしょう?

私は、これまでの経験から「業務改善とは、一気に全部やろうとすると失敗するもの」だと思っています。「見積業務」だけでも「請求業務」だけでもいいから、まずは小さく始めることが大切だと思うんです。

極端な話、boardを「請求書発行ツール」の用途だけで使ってもいいんじゃないかと思います。そこから会計ソフトに自動でデータが連携されるだけで、経理の人はすごく助かると思うんですよね。

もちろん、上場企業で内部統制を気にする必要があるなら、一気通貫で全体を管理できなければいけないですが、ほとんどの企業はそうじゃないですよね。請求書発行が効率化されるだけでも、すごく価値のあることじゃないかなと。

 

たしかに「全部を改革しないと価値がない」と思ってしまいがちですね

そうです。最近は“DX”というワードが広まったせいで、「全部を効率化して、全部を改善しなければならない」と過度に思われてしまっている気がしますね。

たとえば、当社のように「見積書が何パターンも必要なので、営業担当がExcelですばやく作りたい」という会社はたくさんあるはずです。そこで無理をして「このツールに入力しろ」と言うから、現場から「この行を追加したい」とか「この表現ができないと困る」とか、果ては「面倒だから入力したくない」という声が上がる。これでは絶対に失敗するんじゃないかなと。

Excelで作ることが現場にとって最適なら、その結果をboardに入力する人が別にいれば良いだけだと思うんですよ。

それだけでも、後工程は工数が減ってミスも減ってすごく改善されるので立派なDXだし、そういう取り組みこそが業務改善の本来の姿なんじゃないかと思いますね。

 

乙津さんが管理者の立場として、業務改善で気をつけていることはありますか?

「人」ですね。いくらデータ連携だ、自動化だと言っても、業務は人の手により動いていることを忘れてはいけないなと。なぜなら、「人の手でデータを入力する(インポートする)」という作業が、どこかで絶対に必要だからです。

ここはつい勘違いしがちなんですが、「業務を改善すれば正しいデータが流れてくる」わけではないんですよ。どんなシステムでもどこかでデータを入力しなければならなくて、入力は人の手で行われるわけですから、その精度が低ければ正しいデータにはならない。「業務が改善される」ことと「正しいデータが流れてくる」ことは、まったく別なんです。

だから、管理者として「どの部分を人手で行う必要があるか」をしっかり見定めて、「そこから先は正しいデータが流れる状況を作る」ことが必要じゃないかなと。

具体的には、

  • ツール導入や運用変更のメリットをキチッと説明する
  • マニュアルを作る
  • 説明会や勉強会を開く

といったことを1つずつ積み重ねて、メンバーに気持ちよく使ってもらえるように工夫することが大切だと思いますね。

 

逆の立場で、現場からボトムアップで改善を提案するときに気をつけるべきことはありますか?

仮説検証をしっかり行った上で、上司に話を上げることではないでしょうか。

よく「上司がITにうとくて、導入提案しても聞いてくれない」なんて話を耳にするじゃないですか。でも、仮説と検証をしっかり行った上で提案すれば、聞いてもらえると思うんです。

私も若い頃は、「お前はITに詳しいからそんなことを言うが、俺はそうなると思わない」ということを言われました。でも、

  • 今、××の作業にはこれだけかかっていて原因は△△だ
  • このツールを導入すれば、○○だけの効果があるはず
  • だから試しにやらせてほしい

ということをちゃんと伝えれば、にべもなく却下するような上司は、そんなにいないんじゃないかなと。

現場のどの部分が課題になっているのかは、現場にいる自分がよく分かっているはずですよね。「ここがボトルネックになってるはず」「ここが属人化しているはず」という仮説を立てて、社内調整してトライアルをしっかりやり切れば、何かしらの効果は出るはずです。

とにかく、そうした小さな一歩を積み重ねることだと思いますね。その積み重ねの先に、明るい未来が待っているんだと思います。

 

バックオフィスで働く人の市場価値を上げていきたい

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boardに対して、機能改善などのご要望はありますか?

boardは開発ロードマップが公開されていますので、こちらからの要望というのはあまりないですね。代表の田向さんはご自身でもboardを使っていて、サポートもやっているので、声の大きいユーザーさんが言ったから作るといったことではなく、現場の声をちゃんと拾って判断していると思うんです。私はboardの思想は理解して使っているつもりだし、その思想に従ってロードマップが引かれているなら、必要なものはそのうち備わるだろうと思っています。

先ほど、ツールを選ぶ際の観点として「誰が使っても分かりやすいUI・UXか」という話をしましたが、もう一つ大切にしているものがあって、それは「思想に共感できるか」ということなんです。

1つで何でもこなせる完璧なツールなどこの世にありません。であるなら、ツールの思想を理解した上で、「この部分の改善に使おう」という考え方が大事だと思います。

そこを理解して使わないと、たとえば「Googleドライブに見積書のPDFデータを連携できないから、このツールじゃ足りない」みたいな話になるんですよ。でも、「それって本当に大事だっけ?」「本質は何だっけ?」って考えることが、私たち改善する側には必要なんじゃないかなと。

本質が「確定した見積書は変更できないようロックがかかっていればOK」という点にあるなら、Googleドライブに連携できなくてもこのツールは使えるね、という話になる。

今やっている業務を100%当てはめるのではなく、本質を理解し、やる・やらないを整理して、「このツールは使えるのか」「自分たちは何を変えなきゃいけないのか」を考えることが、業務改善では大切だと思います。

 

管理部門を統括される立場として、今後の展望を教えてください

メンバーが「健やか」に働いてもらえるように、体制を作りたいと思っています。

業務量が増えていること自体は、会社が成長しているという証なので良いことです。でも、それを「時間をかける」という方法だけで解決するのは、部門の責任者としてやりたくないんです。

日本全体としても「労働人口の減少」が課題となっている中で、単純な「時間数」や「人数」では問題が解決できなくなってくる。そこを業務全体の設計で改善していくのが、私の役割だと思っています。

 

乙津さんは2020年に「合同会社バックオフィスデザイナー」も起業されています。個人としては、どのような展望をお持ちですか?

バックオフィスデザイナーの理念にも通ずる部分ですが、「バックオフィスで働く人の市場価値を上げていきたい」と考えています。

「バックオフィスはコストセンターだ」と言われることから分かるように、営業や製造の部門と比べると、まだまだ価値が認められていないと感じています。

しかし、先ほども言ったように「人の手でデータを入力することがどこかで絶対に必要」だとすれば、経理や総務や営業事務は、とても重要なポジションのはずなんです。

私はありがたいことに、バックオフィスの世界で一定の市場価値を得ることができたので、今度は若い人たちの市場価値を上げていきたいなと。

今はまだ、新卒で「エンジニアになりたい!」「UI・UXデザイナーになりたい!」という人はいても、「バックオフィスをやりたい!」という人はいないですよね。でも、バックオフィスの仕事の本質は伝票処理だけでなく、クリエイティブなことが、もっともっとたくさんある。それを世の中に伝えていきたいと思って、日々がんばっています。

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