請求書をクラウド請求書サービスから送付する際、「メール添付」でPDFなどを直接送る方法と、「ダウンロードページ」のURLを送る方法があります。どちらが良いかは、受取側の要件や自社の運用方針、セキュリティーや可視化の要件によって変わります。
本記事では両者のメリット・デメリットを整理し、実務での選び方と運用上の注意点を具体的に解説します。
メール添付とダウンロードページの概要
まずは二つの方式の違いを簡単に整理します。
メール添付
送信側が請求書ファイル(主にPDF)をメールに添付して送信する従来型の方法です。受取側から見ると、通常のメールに添付されて送付されてきたのと同じように扱えます。
ダウンロードページ
請求書をクラウド上に保管し、ダウンロード用のURL(あるいはワンタイムリンク)をメールで通知する方式です。ダウンロード状況や有効期限の設定など、配信側で制御できる点が特徴です。
メール添付のメリット・デメリット
メール添付のメリット
馴染みがあり受け取りが簡単
通常のメールにファイル添付されたものと同様ですので、受領側は添付ファイルは普段通りに扱えます。特別な操作や事前の説明も不要な点は大きな利点です。
受領請求書サービスへ取り込みやすい
受領側がメール経由での自動取り込み(受領専用アドレスへ転送など)を使っている場合、添付ファイルで送ることでそのまま取り込めるため手間が少ないです。
メールに履歴が残るため再取得が容易
受信トレイに保存されるため、万が一ローカルに保存し忘れてもメールから再取得できます。
メール添付のデメリット
ファイル取得の確認ができない
受信者が添付を開封・ダウンロードしたかを追跡できないため、処理状況の可視化が難しいです。
なお、クラウド請求書サービスによっては「メールの開封確認」の仕組みがあるケースもありますが、プライバシーの観点から受領側のメールサービスで拒否しているケースもあったり、「メールの開封 = ファイルのダウンロード」ではないため、あまり信頼できる方法ではありません。
誤送信時に取り消せない
誤った宛先に添付してしまった場合、後からファイルの無効化や回収ができない点は情報漏えいリスクになります。
メール容量や添付数の制約
メールサーバーや受信側の容量制限により、大容量ファイルや多数のファイルを送るのが難しい場合があります。請求書の枚数が多い場合などには注意が必要です。
ダウンロードページのメリット・デメリット
ダウンロードページのメリット
取得状況を確認できる
ファイルをダウンロード済みかどうかを確認できるので、未取得の場合は督促がしやすく、入金管理にも役立ちます。
誤送信時に無効化や設定変更が可能
リンクの無効化、有効期限の短縮、アクセス制限などを行うことで誤送信時の被害を抑えられます。
大容量ファイルや複数ファイルの扱いに強い
ファイル自体をクラウドに置くため、メール添付より大きなファイルや複数ファイルに向いています。
ダウンロードページのデメリット
ダウンロード忘れや有効期限切れの手間
受取側がダウンロードを忘れる、あるいは有効期限が切れて再送が必要になることがあり、手間が増える場合があります。
一部の受領システムに非対応なケースがある
受取側の自動取り込みサービスがメール添付前提で設計されている場合、URLからの自動インポートができず手作業が必要になることがあります。
スパム判定されにくいのはどちらか
「ダウンロードURLがあるとスパム判定されやすい」「添付ファイルがあるとスパム判定されやすい」など、どちらのケースの話を耳にすることがありますが、実際には受領側の仕組み次第のため一概には言えません。
たとえば、URLを含むメールは事前にドメインを申請し許可リストに入れておいてもらう必要がある場合があります。このような場合は、事前申請せずにダウンロードページ方式を使うとスパム判定されてしまいます。
一方、ファイル添付の場合は、「メール件名やファイルを踏まえた内容によるスパム判定」の影響を受ける可能性があります。これは、スパムメールが、似たような件名や添付ファイルを使うことが多いためです。
そのため、受領側ごとに異なる可能性もあり、「どちらがスパム判定されにくいか」は一概には言えません。そのため、クラウド請求書サービスを利用する場合、どちらの方式も選択できるのが望ましいです。
boardでは、「ダウンロードページ方式」と「メール添付方式」を選択できます。また顧客ごとにどちらを使うか設定できるため、受取側の要件に応じた柔軟な運用が可能です。
実務での選び方(優先すべき観点)
以下の観点を順に確認すると、どちらを採用するか判断しやすくなります。
受取先の指定・システム要件(最優先)
相手が受け取り方法を指定している場合はその指示に従います。ダウンロードページ・メール添付以外にも、所定のポータルにアップロードする等の指定がある場合もあります。
取得状況の把握の必要性
取得状況の把握が必要ならダウンロードページを検討します。取得状況が把握できると、未入金時の対応がしやすくなるので、送信側にとってはメリットがあります。
セキュリティー要件と誤送信対策
誤送信のリスクや回収の必要性が高い場合はダウンロード方式が適しています。メール添付は回収が困難ですが、ダウンロードページですと、取得前であればリンクを無効にすることで、水際で防ぐことができます。
自動取り込みの要否
受領システムとの連携が必要で、メール添付での取り込みが前提ならメール添付を優先します。一方で、最近の受領請求書サービスでは、ダウンロードページ方式にも対応している場合が増えてきています。事前に受取側のシステム要件を確認してください。
ファイルサイズや送付数
大量送付や大きなファイルはダウンロード方式の方が安定します。
請求書のPDFファイルが大きくなることはあまりありませんが、ファイル数が多かったり、大きめの添付ファイルがある場合などは注意が必要です。
判断のポイント
送信側の視点では、ダウンロードページ方式の方がメリットがあります。とくに未入金時の督促や誤送信時のリスク管理がしやすい点は大きな利点です。
そのため、まずは、ダウンロードページ方式を基本として、受領側のニーズに応じて、個別にファイル添付方式に切り替えるという運用をお勧めします。
boardでは、「ダウンロードページ方式」のメリットを享受するため、デフォルトは「ダウンロードページ方式」になっています。ただ、顧客ごとに「メール添付方式」を選択できるため、受取側の要件に応じた柔軟な運用が可能です。
実例:ケーススタディ
ケースA:大手企業(受領システムあり)
大手の取引先が受領請求書サービスを導入している場合、メール添付で送った方が自動取り込みされやすく、経理処理が効率化できるため、送付方法を指定されるケースが多くあります。
この場合は、事前に取り込み用アドレスや指定ファイル名などを確認し、テンプレートを合わせる運用を行うとミスが減ります。
ケースB:取引先がITに弱くダウンロードページの操作に不安がある場合
受取側の担当者がITに弱くダウンロードページの操作に不安がある場合は、メール添付で直接PDFを渡す方が安心です。ダウンロードリンクを使う場合は、事前に説明しておくと混乱を避けられます。
ケースC:大量請求の一括配信
多数の取引先へ一括送信する場面では、配信ログやステータス管理が重要になります。ダウンロード方式であれば未取得のリストを抽出して督促しやすく、到達率や開封状況に基づく運用改善がしやすいです。
よくある質問(FAQ)
Q. ダウンロードURLを短縮URLで送っても良いですか?
Q. 誤送信した場合、どうすれば良いですか?
ダウンロード方式であればリンク無効化を行った上で、取引先に連絡し、正しい請求書を再送しましょう。
メール添付方式で送付した場合は取り消しすることはできないため、取引先に連絡し、誤送信の旨を伝えてメール削除を依頼します。機密性が高い場合は、上長や情報セキュリティー担当に報告し、必要に応じて法務や社内手続きを開始してください。
まとめ
メール添付は受け取りの敷居が低く、受領サービスへの取り込みがしやすい点で有効ですが、取得確認や誤送信時の回収が困難という弱点があります。ダウンロードページは取得ログや無効化といった管理性・セキュリティー面で優れていますが、受取側の対応可否や有効期限切れによる再送など運用コストが増える点に注意が必要です。
最終的には「受取先の指定」「監査や可視化の必要性」「セキュリティー要件」「受領システムの連携可否」を天秤にかけて決めるのが現実的です。ケースに応じて双方を併用する運用も検討してください。