中小企業が販売管理システムを選ぶ際、「クラウド型」と「インストール型(パソコンにインストールするタイプ)」の2つの選択肢があります。
本記事では、中小企業向けに実務で比較すべきポイントと、どちらを選ぶべきかの判断基準を具体的に紹介します。
目次
クラウド型販売管理システムとインストール型販売管理システムの違い
クラウド型販売管理システムとインストール型販売管理システムの違いについて、トピック別にに解説します。
参考:販売管理とは?中小企業向け販売管理システムの目的・業務内容とフロー、システム選定時の注意点
提供形態
クラウド型はサービス提供者のサーバー上でソフトが動作し、ブラウザーを使ってインターネット経由で利用します。インストール型は自社のパソコンにソフトをインストールして利用します。
導入スピードと初期コスト
クラウド型はアカウント登録と初期設定を行えばすぐに利用開始できます。初期費用が低く、スモールスタートに向きます。インストール型はライセンス購入やインストールなど、導入準備に時間がかかることがあります。
ランニングコスト
クラウド型は月額・年額のサブスクリプションが一般的で、利用者数や機能に応じて料金が変動します。初期費用はゼロまたは低額ですが、長期間や多くのユーザーが利用すると合計コストが増える場合があるためトータルコスト試算が重要です。
インストール型は、ライセンス買い切りや更新契約が主流で、初期費用は高めですが、長期的に同じバージョンを使い続ける場合はトータルで安くなるケースもあります。ただし、新しいバージョンへのアップグレードにはサポート契約が必要なケースも多く、ランニングコストがないわけではありません。
解約の容易性
クラウド型は月単位の契約が可能なものも多く、合わない場合には解約できる柔軟性がありますが、インストール型は一度購入すると返品はできません。
バージョン管理とアップデート
クラウド型はベンダーがバージョン管理や機能改善を行い、ユーザーは常に最新機能を利用できます。
インストール型は、ユーザーがアップデート作業を行うことが多く、その場合は、アップデートのタイミングを選ぶことができます。ただし、不具合修正・脆弱性対応・法令対応などの観点から、速やかなアップデートが推奨されます。
データの所在と責任範囲
クラウド型はデータがクラウド事業者の管理下に置かれます。中小企業にとっては、データバックアップや冗長化が事業者側で提供される利点が大きい反面、データ管理方針(暗号化、保存期間、ログ管理)を確認する必要があります。
インストール型ではデータが社内PCやファイルサーバーなどに保存されることが多く、バックアップやアクセス制御は自社で設計・運用する必要があります。自社でデータ管理できるメリットはありますが、専門知識を持った社員が必要で、人的リソースと運用コストがかかります。
セキュリティー脅威と対策
クラウド型はプロバイダーが複数層の防御、脆弱性対応、監査対応を行うことが多く、最新のセキュリティー対策を活用できます。一方でインターネット経由でアクセスできるため、ユーザー側はID・パスワードの管理などの認証情報は適切に管理する必要があります。昨今では、ID・パスワードだけでなく、2段階認証の導入も推奨されています。
インストール型は外部アクセスを制限しやすく、オフライン環境での利用も可能ですが、端末のマルウェア対策や物理的な盗難・紛失への対応、社内バックアップ運用などを自社で整備する必要があります。
一般的に、「クラウド型はセキュリティーが心配」という声がありますが、パソコンのセキュリティーレベルを考えると、実際には多くの中小企業にとっては、クラウド型の方が最新のセキュリティー対策を利用できるメリットが大きい場合があります。
カスタマイズ性
中小企業向けの販売管理システムの場合、どちらもカスタマイズは不可なケースが多いでしょう。
外部連携と業務システムの接続
販売管理は会計やEC、物流と連携することが多く、外部連携のしやすさは重要です。クラウド型は主要な会計ソフトやECプラットフォームとの連携が豊富で、APIやWebhookを通じた自動連携を活用しやすいです。インストール型の場合、CSVエクスポートやインポートでの連携が一般的でしょう。
バックアップと障害復旧
クラウド型はサービス提供者側で冗長化や自動バックアップが提供されるため、データ消失リスクが低減します。障害時はサービス提供者が対応するため、基本的には復旧を待つ形になります。
インストール型はバックアップ設計や災対策を自社で整える必要があります。予算や人的リソースが限られる中小企業では、適切な冗長化を実現するのが難しい場合があります。
ネットワーク依存性
クラウド型はインターネット接続が必須になります。ネットワーク障害が業務停止に直結します。インストール型はローカルでの稼働が可能なため、ネットワークに依存しない運用ができます。
コンプライアンスと法令対応
クラウド型はプロバイダーが法令対応(電子帳簿保存法、インボイス制度など)を提供・更新することが多く、最新の要件に追随しやすい点がメリットです。インストール型ではアップデートのためのサポート契約またはアップデート版の購入が必要なので、「買い切り」でそれ以降はコストがかからないということにはなりません。
中小企業における最適な販売管理システムの選び方
基本的にはクラウド型を推奨します。
インストール型は、自社でデータの管理・バックアップ・障害時の対応・セキュリティー対策などを行う必要があり、とくに中小企業に置いては、人的リソースとコストの負担が大きくなる可能性があります。また、インストール型の場合は、リモートワーク環境への対応や外部連携の柔軟性が低くなることも考慮すべきです。
インストール型を検討する1つのケースとしては、インターネットに接続できない環境での運用が必須のケースです。このような場合はインストール型を検討しましょう。
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まとめ
中小企業の多くは、まずクラウド型でスモールスタートするのが現実的です。導入のハードルが低く、初期投資を抑えながら業務改善の効果を早く出せます。
最終的には、機能要件、予算、運用リソース、将来の拡張性を総合的に評価して判断することが重要です。製品比較では、無料トライアルを活用して実際の業務フローで試すことを強くお勧めします。