boardの案件管理

boardというプロダクトに初めて触れたとき、多くの人が戸惑うのが「案件」という概念ではないでしょうか。一般的な見積書・請求書発行ツールでは、発行する帳票を選択する機能はあっても、案件という単位で管理しているものはほとんどありません。今回はboardの案件の考え方や活用方法を解説していきます。

 

執筆者:武内 俊介
税理士、業務設計士。リベロ・コンサルティング代表。
金融のシステム企画部門、会計事務所、ベンチャーのバックオフィスを経て、独立。
現在の業務やシステムの使用方法を徹底的にヒアリングしながら、最適な業務フローとシステムの構成を設計し、業務からシステムまでの再構築した実績多数。業務設計のノウハウをパッケージ化したバックオフィスサービス「Brownies Works」をリリース。

 

1. 案件の概念

案件の概念の図

 

多くの請求書発行ツールは「見積書」「請求書」などの帳票を軸に作られています。見積書を請求書に変換する、という機能はあっても、基本的にはあくまでも帳票単位で独立して存在するという考え方です。見積書は作らず、いきなり請求書を作ることももちろん可能です。

一方で、boardは必ず「案件」を作成しなければいけません。企業によっては「取引」や「商談」と呼ぶ場合もありますが、「案件」とは売上の元になる契約(発注)の単位のことで、一般的には、見積書を作成するタイミングで作られるものです。そして、boardではこの案件の中に見積書や請求書、発注書などの各種帳票がぶら下がっているという形になっています。

実際に受発注業務を行っている方であればイメージできると思いますが、ビジネスを行う上では請求書以外にも見積書や発注書、納品書などの様々な帳票がやり取りされます。業態・業種によって変わりますが、企業間取引でいわゆる「納品」や「検収」が必要不可欠な場合は、発注行為や納品・検収行為が完了した証跡として発注書・発注請書や納品書・検収書などを差し入れてもらうことで受注管理や請求処理を行うことがほとんどです。

その案件をいつ受注して、いつ納品して、いつ請求するのか。数件の案件ならいざ知らず、数十件の案件が常に稼働している中で、これらをきちんと管理するのはかなり大変です。Excelや帳票作成ツールの場合は、案件の状況を管理する部分と帳票を作成する部分がまったく別になっているのですが、boardでは「案件」という固まりで、受注ステータスや納品日、請求日などを管理しながら、案件に紐づく各種帳票をいつでも発行できるという構造になっています。

帳票作成ツールよりも少し高度な案件管理がしたいけれど、CRMツールまでは不要だという企業にとって、ちょうどいい案件管理と帳票作成を実現するためのツールがboardであり、それらを実現するための概念が「案件」なのです。

 

2. 受注管理

boardの位置づけ

 

boardは案件管理が前提になっているので、受注ステータス(受注や失注)を管理することができます。当たり前の話に聞こえるかもしれませんが、多くの帳票発行ツールにはこの受注管理という概念がありません。

見積書を発行し、発注の意思表示が相手方からあれば発注書か契約書を作成し、納品が完了すれば請求書を発行する。これらの工程は一連の取引に見えますが、帳票発行ツールの中では連続した取引として管理されているわけではありません。見積書を発行したら発行しっぱなし、というのが基本です。だから、帳票発行ツールとは別に案件状況を管理するExcelなどが必要になってきます。

けっして、帳票発行ツールを批判しているわけではありません。その名の通り「帳票発行」ツールなので、それで必要十分だと思います。しかし前述の通り、常時数十件の案件が動いているような状態だと、この管理体制ではいずれ請求漏れなどの事故が起こるでしょう。

かといって、見込案件の管理や営業の稼働管理、マーケティング対応が不要であるにもかかわらず、CRMのようなツールを導入するのもTooMuchです。そういう状況の中小企業にとってちょうどいいのが、boardの案件でできる受注ステータスの管理なのです。

 

案件一覧のスクリーンショット

 

見積書を作成するためには、まずは案件を作成しなければいけません。案件を作成後、受注に至っていないものはboardの案件一覧ではピンク色で表示されます。CRMのように営業担当者の次のアポや活動を管理することはできませんが、数人の営業担当者が「そういえばこの案件……」と気づくには十分な管理レベルです。

Excelは非常に便利なツールではありますが、「案件管理」のような複数人が常時更新するデータの管理には不向きです。そういうものこそクラウド上で管理されるべきであり、案件管理上の必要に応じて各種帳票が作成できれば、中小企業にとって必要な要件は満たしていると言えます。

複数の帳票を作成できることもboardの大きな魅力の1つですが、それは「案件」という概念で受注ステータスを管理してこそ、真価を発揮するものだと言えるでしょう。

 

3. 定期請求

毎月決まった金額を請求する定期請求は、日本でサブスクリプションという言葉が定着する前から数多く存在しています。保守契約や顧問契約などもその対象です。

帳票発行ツールでは、契約期間という概念を持つことができないため、この定期請求を期間管理ではなく、毎月や毎年などのサイクルで繰り返し作成する「繰り返し請求」という処理で対応しています。

通常どおり契約が続いている場合はそれでいいのですが、契約が終了した後にこの繰り返し処理を止め忘れると、誤って請求してしまうという事故が起きます。こちらも数が少なければ担当者が漏れなく対応できるのでしょうが、数が増えてくると管理すること自体がかなりしんどくなります。

それに対して、boardの案件では定期請求に対応しており、受注後、いつからいつまで請求するのか、という期間をもって管理することができます。請求書のデータをコピーして展開する繰り返し請求とは違い、案件管理の範疇で、請求するべきものを管理しているので、契約内容に応じてきちんと請求を行うことができます。

 

案件一覧と請求一覧の違い

 

boardでは、「案件一覧」と「請求一覧」が別になっています。案件側で請求するべきものを確定させれば、請求一覧で「今月発行するべきもの」を一覧で見られるという仕組みです。案件と請求がイコールではないので、たとえば1つの案件に12ヶ月分(12枚)の請求というケースにおいても、両者を明確に分けて管理できて非常に便利です。

 

4. 合算請求

boardの請求一覧にはもう1つ「合算請求」という機能があります。文字通り2つ以上の請求書を1つにまとめる機能で、1つの取引先に対して複数の案件が走っている場合には非常に便利な機能です。

boardの場合は良くも悪くもすべて「案件」起点なので、この機能は非常に重要です。主なユースケースとしては、「複数契約」と「定期請求+オプション請求」の2つがあります。

まずは、同じクライアントに対して複数の案件を受注しているケースです。異なるプロダクトやサービスについては案件管理上は別にしておいた方が無難です。しかし、請求書を受け取る側としては、1つにまとめて請求してほしい、という要望が出るのも当然のこと。boardは案件と請求が別になっているので、案件は別々で管理しながら、作成された2つの請求書を合計請求書としてまとめることが簡単にできます。それぞれの案件が定期請求だった場合でも、請求時に1つにすればいいだけなので便利です。

もう1つは、定額の定期請求契約の場合で、オプション等で追加の課金が発生した場合です。保守契約や顧問契約を結んでいて、稼働が契約時間を超過した場合や追加のサービスを提供した場合、都度、請求書に明細行を追加していく方法もありますが、後から「オプション売上はどれぐらいあったのか」等が明確になっていた方がベターなので、私は定期請求契約の案件の方には追記せず、別案件としてオプション対応用のものを作って、それらの請求書を合算させることをオススメしています。

非常に細かい話のようですが、実際の請求の局面では、このように様々な要望が営業担当者やクライアントから上がってきます。その要望に応えることができる合算請求の機能は、boardが様々なユースケースを想定して作られていることを示しています。

 

5. まとめ

boardの案件の概念は「ただ帳票が発行できればいい」と考えているとなかなか理解できません。あくまでも顧客との取引を管理する「案件」があり、その中で様々な帳票発行ができる、というふうに見方を変えれば、非常に理にかなった機能になっていることがわかると思います。

案件で管理することができるので、受注管理や定期請求などもboardの中できちんと完結させることができます。案件や請求の管理においては、Excelを使わずに業務を組み立てることが効率化への第一歩です。帳票発行ツールよりも高度な管理をしたいが、CRMやSFAほどの機能は必要のない中小企業にとって、ちょうどいい案件管理ツールであるboard。

案件の概念を理解して、ぜひ使い倒してみてください。

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