請求書業務に追われていませんか?
中小企業にこそ導入してほしい「クラウド請求書サービス」は、作業時間の短縮・ミスの削減・法令対応など、請求業務の様々課題を解決する有力な手段です。本記事では、クラウド請求書の基本機能から導入ステップ、費用対効果、選定のコツまで、はじめての方にもわかりやすく徹底解説します。
目次
- はじめに
- クラウド請求書サービスの基本機能とメリット
- クラウド請求書を導入することで得られる業務改善効果
- 導入前に知っておきたいクラウド請求書の注意点
- クラウド請求書導入のステップガイド
- 費用対効果の考え方
- 法令対応とクラウド請求書
- 自社に合ったクラウド請求書サービスを見極めるポイント
- おわりに:クラウド請求書は「標準装備」になる
はじめに
中小企業においては、限られた人手と時間の中で、いかに効率的かつ正確に請求業務をこなすかは経営上の重要課題です。
紙ベースでの請求書発行やExcelでの管理、古いインストール型のソフトを使った業務は、属人的になりがちで、ミスや漏れも発生しやすい一方、クラウド請求書サービスなら、いつでもどこでも作業ができ、データも一元管理されるため安心です。
さらに2022年には「改正電子帳簿保存法」、2023年には「インボイス制度」が施行され、法改正対応が続きました。今後も法改正の対応が必要になるケースは必ずあります。
業務改善と法令対応の両立を図るためにも、クラウド請求書サービスの導入は非常に有効ですので、詳しく見ていきましょう。
クラウド請求書サービスの基本機能とメリット
請求書業務は、企業の売上とキャッシュフローを支える重要な業務のひとつです。とくに中小企業にとっては、限られた人員で請求書の作成・送付・入金管理などを行うため、業務の属人化や人的ミス、対応漏れといったリスクが日常的に潜んでいます。こうした課題を解決する手段として、昨今広く普及しているのが、クラウド請求書サービスです。
クラウド請求書は、請求書に関する一連の業務をインターネット上のシステム上で完結できるツールであり、作成、送付、管理、保管、さらには入金状況の可視化までを一括して行えるのが特徴です。この章では、クラウド請求書サービスの代表的な機能と、それによって得られる具体的なメリットについて詳しく見ていきます。
請求書作成・送付
クラウド請求書サービスの基本中の基本は、請求書の作成と発行機能です。顧客情報や商品情報、自社設定などを事前に登録しておけば、あとは日付や金額、品目を入力するだけで、請求書を簡単に作成できます。テンプレートは、法令対応済みのものや、自社のコーポレートカラーに合わせたデザインを選べることが一般的です。
PDF形式での出力に加え、ワンクリックでメール送付が可能な点も利点です。メール文面もテンプレート化できるため、都度文面を作成する手間が省け、送付ミスや遅延の防止にもつながります。
ステータス管理で業務の見える化
紙やExcelで請求書を管理していると、「どの請求書が発行済みなのか」「入金があったのか」などの確認が煩雑になりがちです。クラウド請求書サービスでは、請求書のステータス(未請求/請求済/入金済など)を管理できるため、営業や経理担当者の情報共有もスムーズになります。また、メールを送信すると自動的に請求済になるなど、二重請求防止の仕組みも整っています。
たとえば、「支払期限を過ぎた請求書」などのリストをリアルタイムで把握できる機能により、請求漏れや入金遅延への迅速な対応が可能になります。とくにキャッシュフローが重要な中小企業にとって、これは非常に大事なポイントです。
顧客・案件情報との連動
多くのクラウド請求書サービスでは、顧客情報や案件情報と連動できる仕組みになっています。顧客ごとに履歴を検索したり、案件ごとの進捗や支払い状況を追跡することで、ミスのない正確な請求が実現します。
また、見積書や納品書と連動した請求書の生成にも対応しており、「見積書・納品書の内容を請求書に反映」といった流れをボタンひとつで完了できます。これにより、二重入力の手間やミスが大幅に削減されます。
電子押印と郵送代行
法人取引において必要とされることの多い「社印(会社印)」も、クラウド請求書では電子押印機能で対応可能です。電子押印されたPDF請求書は、印刷・押印・封筒詰めといった作業をせずに、相手先に即時メール送信できます。
さらに、多くのサービスでは、郵送にも対応しており、相手が郵送を希望した場合は、クラウドから直接郵送依頼ができることが可能です。これにより、郵送業務もすべてオンライン化され、手間とコストの削減が実現します。
どこからでも使える
クラウド型サービスの最大の特長は「インターネット環境さえあれば、どこでもアクセスできる」という点です。オフィスはもちろん、外出先でも利用可能なため、出張先や自宅からでも請求業務を行うことが可能になります。
たとえば、営業担当者が出先から急遽請求書を発行する必要がある場合でも、クラウド上でログインすれば即時対応が可能です。テレワークやフレックスタイムといった多様な働き方にもフィットする柔軟性は、今の時代に非常にマッチしています。
クラウド以前のインストール型のソフトでは、「営業が見積書・請求書を出すのにオフィス戻らないといけない」ということがありましたが、クラウド請求書ではそのような制約はありません。
その他の便利機能
クラウド請求書サービスには、上記以外にもさまざまな補助機能があります。たとえば、
- 売上集計レポートの自動出力
- 請求書の一括作成・一括送付
- 外貨建て・多言語対応
- SlackやChatworkなどとの通知連携
など、多くの業務を自動化・効率化できる機能が存在します。
まとめ:クラウド請求書は単なる「請求書発行ツール」ではない
ここまで見てきたように、クラウド請求書サービスは「請求書を出す」だけでなく、請求に関わる周辺の業務を一元化・最適化する業務基盤とも言えます。中小企業が限られたリソースで、正確かつスピーディに経理業務を回すためには、もはや欠かせない存在となりつつあるのです。
boardは、見積書・請求書などの作成機能を土台に周辺業務の効率化を図った、請求書サービスと販売管理システムのいいとこ取りのシステムです。

またはboardについてより詳しく見る
クラウド請求書を導入することで得られる業務改善効果
クラウド請求書サービスの導入によって得られるメリットは、単なる「便利さ」や「作業時間の短縮」だけではありません。請求業務の正確性や効率性を高めることは、企業の信用力向上、キャッシュフローの安定、従業員の働き方改革にも直結します。
以下、クラウド請求書がもたらす具体的な業務改善効果を5つの観点から紹介します。
請求業務の処理時間を大幅に短縮
従来の請求業務では、
- 請求書のテンプレート作成(Excel)
- 金額や項目の転記
- 印刷・押印・封筒詰め・郵送
といった一連の作業が必要でした。請求書1枚を発行するのにそれなりの時間と手間がかかり、月に数十件の請求を行う企業では、一日がかりとなることも珍しくありません。
クラウド請求書を導入すれば、
- 請求書の効率的な作成
- PDF出力とメール送信の一括処理
- 定期請求の自動生成
といった操作が可能になり、1件あたりの処理時間は大幅に短縮されます。
たとえば月に50件の請求がある企業では、月10時間以上の作業削減につながるケースもあり、その分をコア業務や顧客対応に回すことができます。

請求業務の負担軽減を目的にboardを導入した結果、請求業務の時間が1/5になり、情報の一元管理によりミスも低減しました
ヒューマンエラーの防止と品質向上
手作業による請求業務には、さまざまなリスクがつきまといます。
- 二重発行や送付漏れ
- 請求日や締日のミス
- 金額の計算ミス
これらは企業の信頼性を損なうだけでなく、回収遅れや再発行などの二次対応によるコスト増加を招きます。
クラウド請求書サービスは、項目選択・自動計算・ステータス管理といった仕組みにより、人間の手によるエラーを最小限に抑えることができます。また、過去の請求履歴やひな形の再利用により、一貫性のある請求業務が可能になります。

boardの導入と併せて運用体制を見直したことで、工数が減っただけでなく、ミスも減らすことができました
入金管理の可視化とキャッシュフローの安定化
クラウド請求書では、「どの請求書が発行済みで」「いつ送付され」「入金が済んだか」といった一連の情報がリアルタイムで可視化されます。
さらに、
- 入金予定日ごとの表示
- 未入金アラート通知
- 未回収(売掛残)の一覧表示
などの機能が備わっている場合、資金繰りの見通しを明確に立てることができるようになります。
これは、売上が季節変動しやすい業種や、受注から請求までが長い中小企業にとってとくに有用です。「資金が足りるかどうか」が勘や経験に頼らず、数字で判断できるようになるため、経営判断のスピードも上がります。

キャッシュフローがマイナスになっていないかは定期的に気になるポイントで、boardの「損益レポート」や「キャッシュフロー予測」を頻繁に見てはすぐに対策を講じています
テレワーク・多拠点業務への対応力が高まる
クラウド請求書はブラウザー上で動作するため、パソコンさえあれば社内・社外・自宅のいずれからでも業務が行えます。これはコロナ禍以降、急速に広がったテレワークやリモートワーク、ハイブリッド勤務との相性が非常に良いという特長です。
たとえば、
- 経理担当者が在宅勤務中でも、社内承認後に即時請求書発行
- 営業担当が出張先からその場で請求書を確認・送付
- 複数拠点の情報を本部で一括管理
といった柔軟な働き方が実現可能になります。
このように、クラウド請求書は単なる業務ツールにとどまらず、企業の働き方そのものを変革するインフラとしての側面も持っています。

どこからでも見積書が作成・送付できるようになり、そのためだけに帰社せずに済むので、かなりの時短が実現できた
組織全体の業務標準化・属人化防止
紙ベースやExcel中心の運用では、どうしても業務が担当者個人に依存しがちです。「あのファイルは誰が持っているのか分からない」「担当者が不在だと確認できない」といった属人化の問題は、企業のリスク要因でもあります。
クラウド請求書は、全データが共有化され、ステータスも一目瞭然。誰でも履歴を確認できるため、
- 属人化の解消
- 業務の引き継ぎ・分担がしやすい
- 内部統制や監査対応にも強い
といった組織的な効果が期待できます。
中小企業においても、少人数で複数の業務を兼務する体制は一般的です。だからこそ、情報が一元管理された環境は、事業継続性の確保にも大きく貢献します。

以前は、請求方法の詳細は担当者に属人化していたため、担当者を増員した際に引き継ぎがうまくいかず、ミスが発生していたが、boardに一元化し、複数の担当者間でずれが生じなくなった
まとめ:目に見える効果と、見えにくい価値の両方が得られる
クラウド請求書の導入によって得られる成果は、作業時間やコストの「削減」だけにとどまりません。企業の信用・業務の品質・社員の働きやすさ・経営の透明性といった、数値化しづらい価値までも同時に享受できるのです。
こうした多面的な効果は、中小企業にとってこそ大きな武器になります。とくに、少人数で多数の業務を回しているような企業こそ、クラウド請求書の導入メリットは計り知れません。
導入前に知っておきたいクラウド請求書の注意点
クラウド請求書サービスは、請求業務を大幅に効率化できる便利なツールである一方、導入にあたっては注意すべきポイントもいくつか存在します。これらを理解し、事前に対応策を講じておくことで、スムーズな導入と安定した運用が可能になります。本章では、クラウド請求書を導入する前に必ず確認しておきたい5つの観点について解説します。
自社の業務フローとサービス仕様の整合性
クラウド請求書を導入しても、自社の業務フローと合致しない場合、かえって混乱を招くことがあります。たとえば、
- 紙の承認印を重視する文化が残っている
- 内税・外税混在などの複雑な請求書フォーマットが必要
- 請求金額の承認ルートが複雑
といった場合には、それが対応しているかを事前に確認する必要があります。
そのため、導入前には「どこまでクラウドに寄せられるか」「どの部分を既存のやり方に残すか」を明確にしておくことがポイントです。可能であれば、トライアル期間中に実際の業務フローに沿った操作を試し、運用に無理がないかを検証することをお勧めします。
社内のITリテラシーと教育体制
クラウド請求書は直感的に使えるUI設計のものが多いとはいえ、すべての社員がすぐに使いこなせるわけではありません。とくにバックオフィス部門では、長年の慣習や紙文化が根強いケースもあります。「クラウドに不安がある」「使い方が分からない」という声が導入の障壁になることもあります。
こうした事態を避けるためには、
- 初期導入時にトレーニングや説明会を実施する
- 自社の運用に合わせたマニュアルや操作ガイドを整備する
- 社内で「導入担当者」を決め、質問対応や情報共有を行う
といった体制づくりが不可欠です。
一部のサービスでは、オンラインセミナーやチャットサポートも提供されていますので、これらを活用するのも有効です。

事務の経験がない状態で入社して、それまで事務ソフトに触ったこともなかったのですが、今はboardを日々活用しています。普段、ITの分野は疎遠だと感じている方でも簡単に使いこなせるシステムだと思います。
セキュリティー体制の確認は最優先事項
まず最も重要なのが情報セキュリティーです。請求書には、取引先の企業名・住所・金額・口座情報など、機密性の高い情報が含まれます。こうした情報をインターネット上でやり取りする以上、サービス提供者がどのようなセキュリティー対策を講じているかは必ず確認しましょう。
具体的には、以下のような対策が講じられているかをチェックします。
ユーザー向け機能として
- 新しい環境からログインした場合には通知
- 2段階認証(MFA)の設定
- アクセス権限の柔軟な設定
- ログイン履歴・操作履歴の記録と確認機能
サービス提供者側の対策として
- 機密情報を暗号化して保存
- WAF・アンチウイルスなどのセキュリティー対策ツールの導入有無
- 継続的な脆弱性診断の実施有無
また、サービスによっては「ISMS認証」などの取得状況も記載されています。これらはセキュリティーに関する取り組みの指標となりますので、導入判断の材料として活用しましょう。
boardでは、2段階認証を必須にする等、セキュリティーを強化する設定を有効にして使用すると割引になる「セキュリティー割引」があります。ぜひセキュリティーを強化してお得に使ってください!
障害時・災害時のバックアップ体制
どれだけ信頼性が高いとされているクラウドサービスでも、サーバー障害や災害による一時的な停止のリスクはゼロではありません。そのため、万が一の事態に備えて、データの保管体制や復旧体制を確認しておくことが大切です。
たとえば、
- データは定期的に自動バックアップされているか
- 自社でCSVやPDF形式でのエクスポートが可能か
- 過去の障害の発生頻度や情報の公開状況
- ステータスページ(障害の情報やメンテナンス情報を公開しているページ)の有無
といった情報を事前に調べておくと安心です。
どのようなサービスであっても障害がゼロということはあり得ません。そのため、きちんと情報を公開しているサービスを選ぶことが重要です。
まとめ:導入前の準備が成功の鍵
クラウド請求書サービスは非常に便利ですが、ただ導入するだけでは効果は限定的です。「何を重視するか」「どこまで任せられるか」「どのように活用するか」を、導入前にしっかり検討することが成功の鍵です。
自社の体制・文化・業務フローに合わせた導入計画を立て、トライアルや情報収集を通じて「現場が安心して使える状態」を整えることが、最大の効果を引き出す第一歩となります。
クラウド請求書導入のステップガイド
クラウド請求書サービスの導入は、単にシステムを契約して使い始めれば終わり…ではありません。むしろ、導入準備の段階が最も重要であり、ここでの設計次第でその後の運用のしやすさや効果が大きく変わってきます。
この章では、クラウド請求書導入を成功させるためのステップを6段階に分けてご紹介します。中小企業にとって無理なく始められる実践的な内容に絞っていますので、導入計画の指針としてご活用ください。

社内では営業と営業事務のメンバーがメインで使っていますが、彼らに対してもできるだけ丁寧に伝えるようにしました。まずは以前のシステムからそれほど手間が増えるわけではないこと、クラウドだからどこにいても書類を作れるという大まかなイメージを伝えて、顧客登録や案件登録、見積書作成といった最低限の操作については独自のマニュアルを作って、個別に伝えていきました。
1. 現状業務の棚卸しをする
まず取り組むべきは、現状の請求業務フローを整理・可視化することです。以下のような観点で、現在どのように請求書を作成・送付・管理しているかを洗い出しましょう。
- 請求書は誰が、いつ、どのように作っているか
- 顧客情報・案件情報などの管理方法
- 発行後の送付手段(郵送/メール/その他)
- 請求書の保存方法と検索性
- 入金確認や催促はどう行っているか
- 課題・不満に感じているポイント
この作業は「見える化」によって、どこに無駄があるか、何が属人化しているかをあぶり出すことができるため、導入後の設計にも大きく役立ちます。
2. 導入の目的を明確にする
クラウド請求書の導入目的は企業によってさまざまです。
- 業務時間を短縮したい
- 誤請求・請求漏れをなくしたい
- 郵送費などのコストを削減したい
- 電子帳簿保存法やインボイス制度に対応したい
目的が明確であればあるほど、導入後の定着率や成果の可視化がしやすくなります。また、上司や経営層への稟議を通す際にも説得力が増します。
とくに中小企業では、経理・営業・総務が兼務していることも多く、「楽になること」が最大の動機になることも珍しくありません。数値目標(例:請求業務の時間を月10時間削減など)を掲げるのも効果的です。
3. 要件定義とサービスの選定
次に、自社に必要な機能と運用条件を明確にする作業に入ります。以下のような項目を洗い出すと、サービス選定がスムーズになります。
検討すべき主な要件
- 請求書のフォーマットはどこまで自由に変更できる必要があるか
- 定期請求・分割請求が必要となるケースはあるか
- 入金管理まで行う必要があるか
- 複数ユーザーで利用するか、権限はどこまで細かく制御できる必要があるか
- 他システム(会計ソフト、CRMなど)との連携が必要か
必要な機能が明らかになったら、いくつかのサービスをピックアップし、比較検討を行いましょう。無料トライアルや操作デモを提供しているベンダーも多く、実際に触ってみることでUIや操作性の確認が可能です。
4. 社内の合意形成と稟議
ツールの導入には、関係者の納得と協力が不可欠です。長年のやり方を変えることに抵抗を感じるケースもあります。
導入をスムーズに進めるためには、
- 「現状の問題点」と「クラウド化のメリット」を明確に示す
- 操作が簡単であることをトライアルで実感してもらう
- 初期導入サポートがあることを伝える
など、心理的ハードルを下げる説明が重要です。
また、経営層への稟議では、「時間とコストの定量的削減」「法令対応」「働き方改革」などの観点から導入効果を整理すると、承認されやすくなります。
5. 初期設定と運用準備
導入が決定したら、初期設定に取りかかります。ここで重要なのは、一気にすべてをやろうとしないことです。まずは小さく始め、徐々に運用範囲を拡げる「スモールスタート」が成功の鍵となります。
初期設定は1日〜数日程度で完了することが多いですが、大事なのは自社に合わせた運用ルールを定めることです。クラウドサービスの仕組みをよく理解し、自社の業務と付き合わせて、運用ルールを決めていきます。
クラウドサービスの多くはサポート体制が整っているため、積極的に問い合わせをして、理解を深めることが重要です。初期設定の段階で不明点を解消しておくことで、導入後のトラブルを防ぐことができます。
6. 社内への周知・教育と運用開始
最後に行うのが、運用開始前の社内周知と操作教育です。とくに複数人で利用する場合、共通ルールが必要になります。
共有すべきポイント例
- 請求書の作成・承認のフロー
- 顧客・商品マスターの更新ルール
- メール送付タイミング
- 操作に困った場合の対応窓口
簡単なマニュアルを用意したり、初回の操作説明会を行ったりすると、導入後の混乱を避けやすくなります。トライアル時に得たフィードバックを活かし、現場に寄り添った運用に落とし込むことが重要です。
まとめ:導入は「計画」と「巻き込み」が成功の鍵
クラウド請求書は便利なツールですが、「入れるだけ」では成果は出ません。 業務課題の明確化、関係者の合意、そして継続的な改善こそが、効果を最大化するカギです。
ステップに沿って一歩ずつ丁寧に準備することで、請求業務が「ストレスの源」から「成長の基盤」へと変化することを実感できるでしょう。
請求業務に課題がある中小企業向けに、請求書発行システムについて詳しく説明した
「中小企業向け請求書発行システムのメリット・機能・選び方を徹底解説」も合わせてご覧ください。
費用対効果の考え方
「クラウド請求書サービスは便利そうだけど、結局コストがかかるのでは?」
多くの中小企業が導入時に最も気にするのが、この「費用対効果」の問題です。
確かにクラウドサービスには月額料金が発生しますが、それに見合う効果が得られれば、コストではなく「投資」 として評価することができます。本章では、クラウド請求書サービスの料金体系の基本と、どのような削減効果が得られるのかを具体的に解説します。
月額料金の構造を理解する
多くのクラウド請求書サービスは、以下のような料金体系を採用しています。
- 基本料金(月額固定):1アカウントごと、または1事業者ごとに発生
- 従量課金制:郵送代行など発送にかかる費用は発行数に応じて変動
- オプション料金:追加機能がプラスアルファの料金で提供されることも
中小企業向けのプランであれば、月額1,000円〜5,000円前後が一般的です。サービスによっては、請求書の発行件数やユーザー数が増えると段階的に料金が上がる仕組みもあります。
重要なのは、単に「料金が安い」かどうかではなく、自社に必要な機能が含まれているか、余計な費用が発生しないかを見極めることです。
削減できるコストの種類
クラウド請求書サービスは、直接的・間接的に多くのコスト削減効果をもたらします。以下に主要な項目をまとめます。
人件費(作業時間の削減)
たとえば、請求業務の発送処理や見込みの集計など、人手で行っていた業務をクラウド化することで、月に数十時間の作業時間を削減できるケースもあります。
たとえば、「現状、メールを1通ずつ送っている場合は、それを一括で送付できるようになったらどの程度の時間の削減になるか」というかたちで、従来の請求業務にかかっていた時間を算出し、削減時間をシミュレーションしてみましょう。
紙・印刷・郵送費
郵送が多い場合は、それをメール送付に置き換えることができれば、郵送費や印刷コストの削減も大きなメリットです。この場合は金額換算しやすいので試算してみましょう。
ミスによる損失回避
- 誤請求による再発行の対応時間
- 請求漏れによる売上未回収
- 二重請求による信頼低下
これらは数値化しにくい損失ですが、企業の信用とキャッシュフローに影響するため、見過ごせません。
長期的な視点で見る投資効果
クラウド請求書の導入は、一度行えば毎月の請求処理が効率化され、その効果が積み重なっていきます。導入初月こそ学習コストがかかるものの、その後は継続的に成果が生まれ続けます。
このように、「費用」ではなく「投資」としての視点で判断することが重要です。
「見えないコスト」にも目を向ける
クラウド請求書は、目に見える直接コストだけでなく、「心理的ストレス」「ミスによる顧客対応」「引き継ぎの非効率さ」といった見えないコストも大幅に軽減します。
- 退職者が出るたびに属人化したExcelファイルを解析…
- 取引先から「請求書来てない」と催促されてバタバタ…
- 入金確認漏れで営業との連携に支障…
こうした「見えないムダ」が無くなることで、組織全体が健全に回るようになります。
まとめ:導入コストを恐れず、効果を数字で捉えよう
クラウド請求書は、一見すると「毎月の固定費」がかかるサービスですが、実際には時間削減と業務効率向上によって、十分に元が取れる仕組みです。
そして、コスト削減以上に重要なのが、経営の視界をクリアーにする「見える化」効果です。請求の流れが整理されることで、キャッシュフローや売上傾向、支払遅延などの傾向も早期に把握でき、企業経営そのものの質が向上します。
また、従業員の働きやすさや満足度の向上にも寄与し、結果として企業全体の生産性が高まります。クラウド請求書の導入は、単なるコストではなく、企業の成長を支える重要な投資と捉えるべきです。
導入にあたっては、費用ばかりに目を奪われず、「どれだけ得られるものがあるか」をぜひ冷静に見極めていただきたいと思います。

そもそもこのコスト感でここまでソリッドな機能が揃っていて、楽をさせてくれるサービスはこれまでになかったので、今いろいろ検討しながらもExcelを使っている事業部や会社にお勧め
法令対応とクラウド請求書
請求書業務には関連する法律があります。たとえば2022年以降の電子帳簿保存法の改正、2023年10月から本格施行されたインボイス制度の影響により、請求書の保存・発行方法に法的な要件が求められるようになりました。
こうした状況において、クラウド請求書サービスは単なる業務効率化ツールではなく、法令順守の土台としての役割を担います。この章では、企業が対応すべき主な法令と、それに対してクラウドサービスがどう対応しているのかを整理して解説します。
電子帳簿保存法への対応状況
電子帳簿保存法は、帳簿や取引関連書類(請求書・領収書など)を電子データとして保存する際の要件を定めた法律です。要件を満たす方法は複数あり、また自社の運用にも関わってきますので、運用と合わせてニーズを満たせるサービスを選択しましょう。
インボイス制度への対応
インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、消費税の仕入税額控除を受けるために「適格請求書」が必要となる制度です。2023年10月から施行されました。
クラウド請求書サービスを使うことで、以下のような要件を満たしたインボイス制度対応の請求書を簡単に発行できる環境が整います。
- 登録番号の自動記載
- 消費税率別の表示
- 軽減税率の対応
- 端数処理要件の対応
参考記事
会計・税理士との連携にも好影響
クラウド請求書を導入することで、税理士・会計士とのやり取りも効率化されます。
- 請求書データをCSVやPDFで出力可能
- 会計ソフトと連携(freee会計、マネーフォワード クラウド会計、弥生会計など)
- 「どの請求書が未収なのか」などの状況を一元共有可能
税理士の立場からも、帳票が統一され、リアルタイムで確認できることは、非常に大きなメリットです。法令対応だけでなく、税務コミュニケーションの質も向上するのは、見逃せない副次的効果です。

会計ソフトに付属している請求書機能よりも、boardを使った方が請求・会計の連携がスムーズになると感じています
まとめ:法令対応こそ「クラウド化」の最大の動機に
2022年の電子帳簿保存法、2023年のインボイス制度と、請求書を取り巻く法律は大きな転換期を迎えています。これに紙やExcelベースで対応しようとすれば、膨大な手間とリスクがつきまといます。
一方で、クラウド請求書を導入すれば、「自動的に法令に準拠した請求書が作成でき、会計処理もスムーズになる」という、「法令対応の自動化・効率化」とも言える状態が実現します。コンプライアンス強化が求められる今こそ、クラウド化による法令順守を戦略的に進めるべきタイミングです。
自社に合ったクラウド請求書サービスを見極めるポイント
クラウド請求書サービスは、国内外に多数存在しており、それぞれに機能・価格・UI・導入サポートなどの違いがあります。しかし中小企業にとって重要なのは、「どれが一番有名か」ではなく、「自社にとって使いやすく、成果を出せるかどうか」です。
この章では、クラウド請求書サービスを比較・検討する際のチェックポイントを、実際の導入担当者の視点で整理していきます。
必要な機能が揃っているか?「やりたいこと」を言語化する
まず確認すべきは、「自社にとって何が必要な機能なのか」を明確にすることです。
「請求書の送付が自動化できればOK」なのか、「入金管理・レポート機能まで含めて一元化したい」のか、自社の要望をあらかじめ書き出しておくと、サービス選定で迷いにくくなります。
既存業務との親和性
サービス選定で見落としがちなのが、「既存の社内業務との親和性」です。どれだけ機能が豊富でも、実際の業務フローと合わなければ定着しません。
確認しておきたい親和性の視点
- 請求書の作成・承認フローをクラウド上で再現できるか
- 会計ソフトとの連携やデータのエクスポートの方式
- 集計機能が自社のニーズに合致しているか
- Excelや紙文化との「共存」が可能かどうか(移行期の運用)
これらを見極めるためにも、トライアル期間中に実際のフローをテストしておくと安心です。
UI・UX(操作性)は直感的か?
中小企業では、必ずしもITスキルの高いスタッフばかりとは限りません。マニュアルを見なくても操作できる直感的なUIかどうかは、非常に大きな要素です。
業務システムにおいて、「使いやすいか」「直感的か」というのは「業務とのフィット感」とも言えます。自社にとって自然な流れ、ほしいところに欲しい情報があるようなシステムは、近い感覚で設計されている可能性が高いです。
「画面の美しさ」ではなく、実務での「扱いやすさ」を重視しましょう。

UIがとてもわかりやすく、「ここにあってほしい」という場所に必要なものが置いてある
サポート体制は充実しているか?
サービス導入時や運用中に困ったとき、すぐに相談できる窓口があるかどうかも重要です。
チェックすべきサポートの形態
- 問い合わせの手段(チャット/メール/電話など)
- 返信までの時間や対応の質
- ヘルプ・動画チュートリアルの有無と品質
- 導入時のトレーニングや初期設定サポートの有無
サポートが充実しているかどうかは、導入の成功確率を大きく左右します。UIが分かりやすくても、万が一のトラブル対応や社内展開の支援が得られるサービスは安心感が違います。

boardのヘルプページは充実しているので、困ったときにすぐに自己解決できますし、サポートに問い合わせても返信が早く、内容も丁寧かつ的確です。
価格体系は“透明”かつ“納得感”があるか?
価格については、「安ければよい」というわけではなく、コストに対してどれだけ価値を得られるかという視点が大切です。
また、自社のビジネスモデルとフィットしているか、という点も大事です。たとえば、少額で多数の請求書を発行するようなビジネスモデルの場合、プランごとに請求書の発行枚数に制限がある場合は、割高になってしまう可能性があります。
このように、自社の業務に合った価格体系であるかどうかを確認することが重要です。
スモールスタートができるか?
中小企業の場合、いきなり全社導入ではなく、
- 「経理部門だけでまず1ヶ月試す」
- 「特定顧客だけで請求書送付を試す」
- 「PDF送付から始め、郵送は残す」
といった段階的導入(スモールスタート) が理想です。
スモールスタートがしやすいサービスには以下の特長があります。
- 月額課金制で、最低利用期間なし
- ユーザー数や機能を柔軟に追加できる
- 必要最低限の初期設定で利用開始できる
「とりあえず使ってみる→良ければ利用範囲を広げる」という運用が可能なサービスを選ぶことで、導入の心理的・物理的ハードルが下がり、社内の理解も得やすくなります。
まとめ:「誰が使うか」「どう使うか」で最適解は変わる
クラウド請求書サービス選定で最も大切なのは、「自社にとっての使いやすさ」や「必要な機能が無理なく使えるか」 という視点です。
導入後に「使いこなせなかった」「現場がついてこなかった」とならないように、最初から全体最適を狙うのではなく、「使い始めやすいこと」を重視しましょう。
最適なツールは企業ごとに異なります。見た目の派手さや機能数ではなく、自社の課題を解決できる「現場視点」で選ぶことこそが、クラウド請求書導入成功のカギなのです。
請求書作成・発行業務を効率化し、ミスやトラブルを防ぐためのポイントを分かりやすく解説した
おわりに:クラウド請求書は「標準装備」になる
「請求書業務をもっと効率化したい」「ミスや手間を減らしたい」「法令対応が不安だ」
こうした悩みを抱える中小企業の経営者や経理担当者にとって、クラウド請求書サービスの導入は、もはや「特別な選択肢」ではありません。
むしろ今やそれは、事業の継続性や競争力を維持するために必要な「標準装備」 となりつつあります。
本記事では、クラウド請求書の基本機能から、導入メリット、法令対応、費用対効果、選定のポイントに至るまで、幅広く解説してきました。もしここまでお読みいただき、少しでも「うちの会社にも必要かもしれない」と感じていただけたなら、ぜひ一歩を踏み出してみてください。
もちろん、いきなりクラウド請求書にすべてを切り替える必要はありません。最初は一部の顧客だけで試してみたり、定期請求から始めてみたりと、小さな一歩から始めることで、大きな変化に繋がるのです。
デジタル化、ペーパーレス化、テレワーク、法令対応、そして何より「人に優しい業務」へ。
多くの中小企業において、請求書管理がずさんな実態を目の当たりにすることがあります。正直、想像以上に混乱しているケースが少なくありません。
たとえば、エクセルで作成された複数の請求書がどれも最新版かわからなくなっていたり、様々な形式の請求書が混在していたりすることも珍しくありません。これでは正確な月次売上を把握することが難しく、場合によっては入金の有無すら曖昧になることがあります。
たしかに、日々の業務では予期せぬトラブルやクレーム対応に追われ、請求書管理まで手が回らないと感じることもあるでしょう。しかし、どのような状況でも心を落ち着け、地道に整理整頓を続けることが、何よりも重要です。
クラウド請求書システムは、こうした「整理の仕組み」を外部に委ねる手段とも言えます。システムのルールに従って確実に情報を整え、安定した業務運営を実現していきましょう。